黒カシスの香りや果実味の凝縮感と渋みが…
黒カシスの香りや果実味の凝縮感と渋みが…
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 フード&ワインジャーナリストの鹿取(かとり)みゆきさんが、日本ワインを紹介する。今回は山梨県甲州市の「シャンテY・AますかっとべーりーA Y cube 2013(赤)」。

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 シンプルに思えるワインの名前に、生産者はさまざまな情報を込めている。ブドウの品種や収穫された土地の名が使われることも多い。今回紹介する、「シャンテY・AますかっとべーりーA Y cube」。最初の「シャンテ」は、仏語で「歌う」を、次の「Y・A」は醸造家の雨宮吉男さんのイニシャルを意味している。真ん中の「ますかっとべーりーA」は品種名。最後の「Ycube」は雨宮さんと、ブドウ農家である横内政彦さん、横内才仁さんの名。そして3人で、立体的(キューブ)な味わいを生み出したいとの願いが込められた。

 きっかけは、あるワイン会。雨宮さんのワインに惚れ込んだ政彦さんは、丹精込めて育てたブドウを彼に託そうと決めた。才仁さんが加わり、雨宮さんも熱意に応えた。

 完成したのは、黒カシスの香りや果実味の凝縮感と渋みがハーモニーを奏でるようなワイン。原料のブドウを見事に生かした味わいだ。3人のYによるこのワインは、本場・仏国のパリでも好評を博している。

(監修・文/鹿取みゆき)

週刊朝日 2015年9月18日号

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