『週刊朝日』の長友佐波子編集長が今を輝く女性にインタビューする「フロントランナー女子会」。今回は「ゴホンといえば龍角散」というフレーズでお馴染みの龍角散で執行役員、開発本部長となり、企画開発部長、国際部長、マーケティング部長を兼任する福居篤子さんです。
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長友:最初に手掛けたのは何ですか?
福居:「龍角散鼻炎朝夕カプセル」ですね。今は朝、夕2回の服用でいい薬って多いけど、当時は3回飲むのが当たり前だった。そこで、2回ですんで、かつ、眠くならないものを作りたいという会社の課題があったんです。そこに、はりきっている私が来たので、これでもやらせとけ、と。
長友:つまりいろんな人が投げ出していたものを成功させて、新たな製法を発見したんですよね? 特許も取ったんですか。
福居:うちの会社、当時は特許に疎かったので……。
長友:もったいない! 他社にマネされまくったんじゃないですか?
福居:はい、マネされまくってますね(笑)。
長友:いろんな賞を取るきっかけになったのは「服薬補助ゼリー」ですよね。飲みにくい薬を包み込んで一緒に飲むゼリー。どういうきっかけで開発を?
福居:当社の鎮痛薬につける水を開発してくれという営業の要請があったんです。でも水じゃないだろう、ゼリーだろうと思って。
長友:それはなんで?
福居:病院にいるとき、服薬の時間に病棟に上がって入院患者さんの様子を見たことがあるんですけど、薬をうまく飲めない嚥下障害がある方には、ミキサー食に薬を混ぜて出したりするんですね。でもそれだとまずいから食べない。食が進まないから薬も取れない。薬を飲むときに補助できるものがあればな、というのがずっと頭にあって。それで勝手にゼリーを開発して経営会議に持っていったんですけど、当時の役員は年配者ばかりで、そもそもゼリーを知らない。「何だこの気持ちの悪いものは?」と全員に反対されました。介護もクローズな時代だったから「薬が飲めない人がいるわけない」「ニーズなんて絶対ない」って。