長友:完全に却下ですか。
福居:却下。でも今の社長が就任したばっかりで、龍角散だけじゃダメだという危機感を持っていたんですね。そんなに言うならと介護施設に見学に行って現状を目の当たりにしたわけです。それでようやくOKが出て1998年に施設や病院向けに「龍角散の嚥下補助ゼリー」を発売しました。
長友:薬をご飯に混ぜていた施設で試したら、お米の消費量が増えたとか?
福居:そうなんです。おいしく食事をいただいたあと決められた量の薬を飲めばみんな元気になりますから。
長友:素晴らしいですね。2000年には子供用の「おくすり飲めたね」(当時は「おくすりのもうね」)も出して、これが大ヒット。07年には漢方薬用のゼリー、13年には嚥下障害のない健常者が薬を飲むための「らくらく服薬ゼリー」も発売、シリーズで好評だとか。健康でも水よりゼリーのほうがいいんですか?
福居:水とカプセル剤が飲み込まれていく様子をX線で透視撮影したんですけど、健常者でも水なしだと100%、コップ一杯の水で飲んでも85%がのどや食道にくっついてしまうことがわかったんです。そのままのどで溶けると高濃度の医薬品に粘膜が侵されて潰瘍の原因になります。東大と一緒にのどのストレス実験も行ったんですけど、薬を水で飲むとすごくストレスがかかるけれど、ゼリーならストレスが少ないということもわかった。そもそも人間って水と固体を一緒に飲むことができない。でもゼリーは水だと判断するし、固体はゼリーに包まれているから、のどが騙されるわけです。それで自信を持って健常者向けの服薬ゼリーを発売しました。
※週刊朝日 2015年8月28日号より抜粋