安倍首相はインターネット番組で、自衛隊の武器使用権限が拡大されることで「リスクは減る」との認識を示しているが、資料で検討事項に入っている南スーダンでの駆けつけ警護は、安全な任務とはいえない。国連職員として紛争処理に関わった伊勢崎賢治・東京外国語大教授は言う。
「国連は、コンゴでも武装勢力による虐殺を止められなかったことで批判を浴び、2013年に中立・軽武装のPKOから戦闘部隊の導入に方針を転換しました。実は、コンゴと南スーダンのミッションは連動していて、自衛隊が送られている南スーダンのPKOも、戦闘部隊になる可能性がある。すると、住民保護のために、自衛隊は武装勢力と交戦しないといけない。その時点で憲法違反になります」
戦後、一人も殺していない自衛隊が、この法案に拒否反応を示すのも当然かもしれない。現役の自衛隊員も、不安や不満を隠そうとしない。陸上自衛隊でイラク・サマワに派遣された経験のある隊員は言う。
「『全面的に米軍が守ってくれる』と上官に言われ、手当もよかったので、家族に反対されたけど、イラクに行った。しかし、現地でウソだとわかった。米軍は交戦して死者、負傷者がバンバン出ていた。米軍兵士と現地で話すと、『イラクすべてが戦場、日本も参加しているんだ』と言われた。憲法9条があるから自衛隊に入ったという人は、かなりいます。私もそう。基本的には戦場に行くことはないだろうと思っていたが、安倍首相は変えようとしている。内心ではみんなブーイングです。政治家はいいよ、戦場に行かないからね」
(本誌・西岡千史、長倉克枝/今西憲之、横田一)
※週刊朝日 2015年8月28日号より抜粋