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 腹部のがんの手術を受けた人の約2割に発症する腸閉塞。その基礎知識と治療、医師選びについて、大腸がんの腹腔鏡手術にその黎明期から携わり、下部消化管に詳しい聖マリアンナ医科大学東横病院病院長の宮島伸宜(みやじまのぶよし)医師に聞いた。

 腸閉塞は、機能性と機械性に分類されます。何も原因がないにもかかわらず、腸の動きが止まったり、無秩序に動いたりしてしまうのが機能性。手術後の癒着やポリープなど詰まる原因があるものが機械性です。

 機能性では、腸の機能を整える内科的治療を選択します。機械性は単純性と絞扼性(こうやくせい)に分けられ、血管が締め付けられる絞扼性は、緊急手術をしないと命に関わります。単純性は内科的治療と手術に分かれ、多くは、1週間ほどの入院により絶飲食と点滴で経過をみて、改善しなければイレウス管による治療などをおこなうとほぼ改善します。それでも改善しない場合に、手術をおこないます。

 腸閉塞は原因となる元の手術を、開腹手術よりも腹腔鏡手術でおこなったほうが発症しにくいと言われています。同様に、腸閉塞自体の手術をおこなう際も腹腔鏡手術のほうが再発が少ないです。ただし、腸閉塞は詰まった場所が数カ所に及ぶ場合もあり、見るだけでは限界があるので、閉塞部位が確定できたときに腹腔鏡手術を選択すべきです。腸閉塞の手術は、臨機応変な対応が必要なため、定型化されたがんの手術よりむしろ難しいです。腹腔鏡手術の熟練者のもとで受けることをおすすめします。

 また、大腸がんの閉塞に対するステント治療は、成功すれば緊急手術で人工肛門を作ることを避けるメリットがあります。一方、穿孔やステントのずれの危険もあるため、合併症で緊急手術になる場合もあります。さらにステントを使ったほうが予後が悪いという報告もあるため、ステントの経験が豊富な病院で治療を受けるべきでしょう。 

 高齢者は、腸閉塞になると、脱水状態に陥りやすく重症化しやすいです。手術経験のある高齢の方は、膨満感や腹痛、便秘や吐き気などの症状が出たら、腸閉塞も疑ってすぐに病院を受診しましょう。元の手術の執刀医師に診てもらうのが理想ですが、近隣の消化器病に強い病院も探しておきましょう。

週刊朝日 2015年8月21日号