妻:仲間たちは彼のこと知ってたみたいだけど、私はほとんど知らなかった。知ってたらこんなに大変な人、付き合わなかったかも(笑)。

夫:彼女のその、白紙な状態が良かったのかもしれない。先入観なしに僕の考えに賛同したり、一緒に楽しんでくれた。僕は僕で、第一印象は「わーい、女優さんだあ」(笑)。ミーハー気分で、こんなきれいな人と付き合っちゃっていいのかな……みたいな。

妻:私は実はバツイチなんですよ。その舞台が離婚後はじめて取り組んだ作品で。

夫:100平米の豪邸から出てきたんだよね。

妻:そう、すごく広いマンションでいい車もあって……っていう生活から、アパートでのひとり暮らしに変わったの。すぐに舞台稽古が始まって、彼が現れて、付き合うことになって……。

夫:空中ブランコみたい。前の結婚から、ほいっ、と受け渡された感じ(笑)。

妻:モーリーと付き合うまでは、インターネットさえない生活でした。家に夫のパソコンはあっても私は触ったこともなくて。離婚の手切れ金代わりにマックブックを買ってもらったのが、人生初パソコン(笑)。だから一緒に暮らすようになって、びっくりするぐらい突然に、社会への窓が開かれましたね。元々芝居に取り組むときも脚本の背景や人物像をリサーチしまくるタイプなので、いろんなことを手当たり次第に調べていきました。

夫:やがて彼女も一緒にネット配信に出てくれるようになって。

妻:彼は人権問題とかシビアなテーマにどんどん切り込んでいくから、賛同してもらえたり非難されたり、毎回大変でした。私には、何が何だか……。でも、彼のジャーナリズムの才能はすごい、って最初から思っていました。先見の明っていうのかな。チベットも「北京五輪以降は、気軽に行けなくなるかもしれないから、今のうちに現状を見てこよう」って。医療大麻やLGBT(同性愛者、両性愛者、性別越境者)もそう。彼の先を見通す力ってすごいなと、今も尊敬してます。

週刊朝日 2015年8月7日号より抜粋

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