『週刊朝日』の長友佐波子編集長が今を輝く女性にインタビューする「フロントランナー女子会」。今回は東燃ゼネラル石油で、初の女性執行役員となった川久保玲子さんです。同社は、2000年にモービル石油とエッソ石油、東燃とゼネラル石油が一緒になってできた企業です。
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長友:女性だからって嫌な思いはしませんでしたか?
川久保:そんなのたくさんありますよ!(笑)会社として差別はなかったけど、働いているのは普通の日本人の男性ですから。人事の次は供給本部という原油の輸入担当になったんですけど、担当になると、みんな大きな原油船のタンカーというものを体験するために陸側からタグボートに乗って移動するんです。でも私のときは「女の子で危ないから」って理由でタグにも乗れなかった。
長友:あー、悪気はないけど過保護になるパターン。
川久保:そうそう。でもいいことも結構あって。その次は財務に希望を出したんですけど、財務が採りたかった男性は担当部署の部長が出さなかった。でもうちは「女の子はもらい手があるうちに行ったほうがいいよ」と言ってスッと出してくれて、おかげで希望の異動ができた(笑)。
長友:今じゃ立派なセクハラ発言ですけどね(笑)。
川久保:だから、何が幸いするかはわからない。
長友:行きたい部署って自分で希望するんですか?
川久保:希望もするし、相互売り込みでお互い条件がそろったときに動けます。ついでに言うと、最初に育休を取ったあと、異動先に決まっていた某部署の部長さんが代わって「男が命を懸ける世界に女はいらない」って拒否されたんです。
長友:うっわ、ヒドい!
川久保:頭にきたけど、可哀想に思った販売促進の部長が引き取ってくれて。結果的に女性が少ない営業系に異動できて、人、モノ、カネ、経営、全部学べました。
長友:そう聞くとラッキーですけどね。しかも98年には米国の本社に出向……あれ? お子さんはいつ出産されたんでしたっけ。
川久保:91年に娘、95年に息子を産みました。だから夫は日本に置いて、6歳と3歳の子供を連れてアメリカに行ったんです。
長友:え~! 子連れ赴任ですか。保育園とか大丈夫だったんですか!?
川久保:アメリカは女性の進出が進んでいるから、その辺は何とかなるだろうと思って。まぁ実際に行ってみるまで何の保証もないんですけど(笑)。でも実際に見つかりましたし、本社は5時キッチリに終わる。一緒に打ち合わせをしている同僚の男性も「今日うちの赤ちゃん、俺がピックアップしないといけないから」とか言って消えちゃう。
長友:家族中心の働き方が確立されているんですね。
川久保:そう、晩ご飯は家族で食べるものだから、部の歓送迎会も昼休みにやる。生涯でいちばん楽しかったです。
※週刊朝日 2015年7月31日号より抜粋