今後の争点は、保見被告の責任能力の有無になりそうだ。弁護人は、
「裁判所の鑑定でも妄想性障害とされた。犯行時は心神喪失もしくは心神耗弱だった」
と、無罪を主張。これに対し、検察側も有罪立証のための「隠し球」を出してきた。検察側の冒頭陳述によれば、保見被告は集落の住民から悪い噂を立てられ挑発されたと思い込んでいた。犯行前にはほとんど仕事がなく、家財道具を売り払い食いつないでいたという。
「1千万円の貯金を切り崩し生活費にあてていた。犯行時には預貯金1627円、所持金4246円。生活が立ちいかなくなり自殺を決意。どうせ死ぬなら、近隣住民に報復をと考え犯行を決意した」(検察官)
逮捕後、保見被告が潜伏していた山中からは、犯行に使用したとされる手づくりの木製の棒やICレコーダー、茶色の封筒、睡眠導入剤のハルシオン、靴などが発見された。封筒には、飼い犬を第三者に託し、自殺を図るという“遺書”のような内容が書かれていたという。自身の逮捕直後にこの世を去った愛犬に話が及ぶと、保見被告は目を赤くして涙した。
惨事はなぜ起きたのか。裁判の行方を注視したい。
※週刊朝日 2015年7月10日号