「日本の労働力人口は減り始め、稼ぐ力を高めるには、高スキル・高賃金の人たちをいかに成長産業や成長分野に移動させるかが重要になってきた。日本経済を引っ張る人の労働環境をよくするためにも、法改正が必要なのです」(自民党の大岡敏孝衆議院議員)
仕事の報酬を成果で決めることで、ムダな残業がなくなる。生産性が上がれば会社の売り上げもアップする。従業員も自由な時間に働けるようになり、子育てや介護などの事情に合わせた「多様な働き方」ができるようになるという。
本当に政府が絵に描いたような、柔軟な働き方で充実した生活を送れるのか。
「むしろ“定額働かせ放題”になる危険性がある」と言うのは、東京管理職ユニオンの鈴木剛執行委員長だ。
「日本は先進国のなかでも労働時間が断トツに長い。管理職になると仕事量が増えて残業がなくならないのが現状です。責任感の強い人ほど、成果が上がるまで必死に働こうとするので、歯止めがかからなくなる」
国際労働機関(ILO)などのデータによると、週49時間以上働いている人は、アメリカ16.4%、フランス10.8%、これに対して日本は21.7%と、世界から見ても働きすぎの状態だ。
働きすぎは心身ともに負担をかける。過労自殺による労災請求件数は年々増加。13年度は過去最多の1409件に達した。
こうした状況を改善しようと、昨年11月、過労死の実態調査や国民への啓発などを盛り込んだ「過労死等防止対策推進法(過労死防止法)」が施行されたばかり。その一方で、残業代ゼロ制度を導入するように、安倍政権の政策は“アベコベ”だ。
※週刊朝日 2015年6月26日号より抜粋