富士山の麓をゆくローカル線、岳南電車。
車両の形と色から、「赤ガエル」「青ガエル」と呼ばれ親しまれるこの電車を応援する「カエル」がいる。
カエルの頭に、“むき出し”のサラリーマンスーツ。名前は「ケロリーマン」。
「存続が危ぶまれていた岳南電車を、なんとか応援したいと思ったんです」
と、プロデューサーで“中の人”でもある、静岡県富士市在住のデザイナー、石井実さんが言う。
公式キャラのいなかった岳南電車に提案したが承諾を得られず、「非公認」というかたちで昨年9月から活動をスタートした。
ケロリーマンは、「富士市内の製紙会社につとめるサラリーマン」。趣味は、「自宅での映画・音楽鑑賞」で、特技は「パントマイムと水泳」。マスクは既製品のマスクに彩色加工したもの。哀愁ただようサラリーマン姿なのは、
「クールジャパンのイメージを出したかったんです」
首から下が“むき出し”なのにも、利点はある。
「普通のゆるキャラと違って、首から下をいろんなパターンで見せることができます。あとはかさばらないので、どこでも気軽に行けるところですね」
“OLガエル”の“ケロウーマン”もいるが、もちろんケロウーマンは、石井さんではない。
テレビ番組に一視聴者として動画を投稿するなどコツコツとしたプロモーションも重ねた。5月には地元の写真家、吉田蘭丸さんが撮影した電子書籍写真集もリリースした。
「ケロリーマンの持つ哀愁や夢を、写真で表現しようと。ただ、マスクをかぶるとカメラマンの指示がよく聞こえなくて(笑)」
ケロリーマンが主に出没するのは、富士市内のイベントと、もちろん岳南電車のイベント。写真集でも、岳南電車の車内や駅でも撮影をしている。
「イベント参加も快く承諾していただけて。ようやく『半公認キャラクター』という感じでしょうか」
(太田サトル)
※週刊朝日 2015年6月26日号