リーダー名で買えないアルバムというものがある。これなどはその最たるものだろう。ピアニスト、ロニー・マシューズをご存知の方は相当のマニアだ。いや、あのマンハッタン・ジャズ・クインテットのデヴィッド・マシューズとは違います。1960年代後半の、ちょっと陽の当たらない時期のアート・ブレイキー・ジャズ・メッセンジャーズのピアニストを務めていた方のマシューズです。
まあ、陽が当たらないとは言え、名門バンド、メッセンジャーズに在籍していたのだから実力はしっかりしている。しかし、一応彼の代表作とされてはいるのだけど、このアルバムをご指名で購入された方はあまりいないのではないか。わが「いーぐる」でも、このアルバムをかけると、最初は不審そうな顔つきでジャケットを眺めていたお客様がおずおずと手にとって眺め、やはり不審気な顔をしつつ、でもしっかりタイトルをメモしていかれるのだ。
つまり「聴いて納得」のアルバムなのである。キモは、サイドに参加しているフレディ・ハバードの活躍だろう。60年代前半、ちょうど油の乗り切った時期のハバードの勢いの良いトランペット・プレイがタップリ堪能できる。もちろんそれを支え、煽り立てるリーダー、マシューズの、腰が座りつつしかもノリの良いピアノがフレディをいい気分にさせているのは間違いない。
また、これもあまり知られていない、チャールス・デイヴィスのドスの効いたバリトンが、高音域を小気味よくヒットさせるフレディのサウンドを塩梅よく引き立たせているのも、このアルバムの聴きどころだろう。
いかにも60年代後半のプレスティッジ・レーベルらしく、まったく購買意欲をそそらない、やる気のないジャケット・デザインでも大いにソンをしているが、内容はブルーノート4000番台の良くできたハードバップ・アルバムに比べても遜色のない出来なのである。
まあ、大名盤とは申しませんが、ハードバップ・ファンなら間違いなく喜ぶ、知名度、見た目のマイナー感を裏切る好盤であることは保証いたします。
【収録曲一覧】
1. Thang
2. Ichi Ban
3. The Orient
4. Let's Get Down
5. Prelude to a Kiss
6. 1239-A
Ronnie Mathews(allmusic.comへリンクします)
Piano - Ronnie Mathews
Baritone Saxophone - Charles Davis
Bass - Eddie Khan
Drums - Albert Heath
Trumpet - Freddie Hubbard