イッツ・オンリー・ザ・リズム
イッツ・オンリー・ザ・リズム

ジョン・ビーズリー参加の89年フランス・ライヴ
It's Only The Rythm (Cool Jazz)

 本来であればマイルスの公式ブートレグ・シリーズの新作が出ているころですが、例によって延期になっています。このレガシー・シリーズは、ちょっとおかしいですね。最初から出せない日付を公表し、結局は延期、延期の連続攻撃、しかもその延期も数日や数週間という単位ではなく、場合によっては数年になったりと、これはもう「読みが甘い」というしかなく、マイルスのレガシー・シリーズは、すべて、この読みの甘さが悪いほう、悪いほうへと逆効果として出ているように思います。世間ではこういうことを「計画性がない」といいますが、計画性なき再発シリーズなどありえず、しかしそれでもなお強引に遂行してしまおうというのが、このブートレグ・シリーズというわけです。

 以上、今週は久々に怒りの鉄拳からスタートしましたが、こういうことを常に言っておかなければならないという困った状態が昨今の音楽業界ではあります。その犠牲にマイルスが、あるいは音楽がなってはダメだと思うのです。

 というわけで今週ご紹介するのは、89年4月のフランス・ライヴです。タイトルがちょっと意味不明ですが、まあ「リズムの時代」ということなのでしょう。そう、この時代のマイルスは以前にも増してリズムにこだわり、すべてはリズムに始まりリズムに終わると考えていたふしがあります。つまりメロディー路線からの脱却ですね。そしてその思いは晩年に至るほど徹底されていった。

 会場の規模がわかるようなオーディエンス録音です。こういう音のバランスが好きな人にはたまらないでしょうが、きらいな人には別の意味でたまらないものがあるかもしれません。そこは個人の嗜好ということでしょう。しかしマイルス・グループの演奏は、改めていうまでもないことですが、快調この上なく、とくにジョン・ビーズリーがシンセを担当している時期だけに、その点でも貴重といえば貴重な音源といえると思います。

 最後に告知です。10月2日(火)の夜、インターFMに出演しますので、お時間のある方は聴いてください。ただしテーマはボブ・ディランの新作です。約1時間、喋ります。生放送です。音楽プロデューサー/ミュージシャンの寺岡呼人さんが担当する新番組『テラオカミュージック』の第1回ゲストとして声をかけていただきました。ナマは怖いのですが、まあなんとかなるでしょう。というところで、それではまた来週。

【収録曲一覧】
1 Jilli
2 Hannibal
3 Intruder
4 Star People
5 Perfect Way
6 Mr. Pastorius
7 Human Nature
8 Tutu
9 Time After Time
10 Full Nelson
11 Carnival Time

Miles Davis (tp, key) Kenny Garrett (as, ss, fl) Foley (lead b) Kei Akagi (synth) John Beasley (synth) Benny Rietveld (b) Munyungo Jackson (per) Ricky Wellman (ds)

1989/4/12 (France)