最近ではハンク・モブレイは立派なハードバッパーとしての人気を確立させており、B級視するファンは少なくなった。それでも、作品によっては内容のわりに知名度の低いものがある。今回ご紹介するアルバムも、レーベルがプレスティッジと言うこともあるのかもしれないが、ブルーノートの諸作の影に隠れがちだ。
一般的な印象だが、ブルーノートは一応リーダーに焦点を当てたアルバム作りをしている。モブレイの代表作『ソウル・ステーション』にしろ『ワークアウト』にしろそれは言えると思う。一方プレスティッジにはとりあえずリーダー名は付いているものの、実態は寄せ集めミュージシャンンのジャム・セッションに過ぎないものも多い。
とにかくその場に集まったミュージシャンに大量に録音させ、まったく別のリーダー作の中にそれぞれのセッションを混ぜ込んじゃったりするんだから、「リーダーの音楽性の発揮」なんていう高級な話は難しくなる。
そのかわり、いわゆる「ジャズマンの日常」を切り取ったような気負いのない小傑作は、えてしてこうしたルーズな環境から生まれることが多いのだ。このアルバムの聴き所はまさにそこで、「さあ、聴くぞ」と身構えるより、「ちょっとジャズでも聴いてみようかなあ」といった気分にジャストフィットなのである。
とは言え、このテイストはハードバップ・マニアなら絶対に気に入ると思う。何しろドナルド・バードにジャッキー・マクリーンという強力な助っ人が脇を固める、実に魅力的な顔合わせなのだ。トラックによって組み合わせが異なるが、基本はバードのトランペットとモブレイのテナーの2管クインテットで、それにマクリーンが加わった3管セッションとモブレイのワンホーン・カルテットという、なかなかツボを押さえた組み合わせになっている。
そして、もう一つの聴き所がピアノに座ったバリー・ハリスだ。パウエル派特有のノリの良さに加え、ちょっとひなびた味わいがモブレイ節にピッタリなのだ。ほのぼのとしたのどかさと言ってもいい。有名なバップチューン《バウンシング・ウイズ・バド》にしろ《52番街のテーマ》にしろ、ハードバップ期の演奏ならではのこなれた感触がこのアルバムの聴きどころなのである。
【収録曲一覧】
1. Bouncing With Bud
2. 52nd Street Theme
3. Minor Disturbance
4. Au Privave
5. Little Girl Blue
6. These Are The Things I Love
7. Message From The Border
8. Xlento
9. The Latest
10. I Should Care
11. Crazeology
※CDは、Mobley's MessageとMobley's Second Messageーからのコンピレーション全11曲入り
ハンク・モブレー (ts)
ドナルド・バード (tp) except 5
ジャッキー・マクリーン (as) on 4
バリー・ハリス (p)
ダグ・ワトキンス (b)
アート・テイラー (ds)
★1956年7月20日、ニュージャージーにて録音
(MONO)