前期よりも利益が増えた場合、配当性向や総還元性向の数値目標を順守するなら、おのずと増配されることになる。今から増配を見込んだ先回り買いが可能なのだ。こうした観点から、田村さんに選んでもらったのが下の表だ。

 このうち、土地のオーナーに節税対策の賃貸住宅を提案する大東建託は4月28日に15年3月期決算を発表し、7期連続で過去最高益を更新。併せて発表した会社予想によれば、16年3月期もさらに過去最高益を更新する見通しだ。8期連続増益となる。

 残念ながら前期の年間配当は391円から375円に減額されたが(前々期は347円)、今期は前期比24円増の399円に増額する方針を発表している。増収増益が続く限り、増配を実施する可能性が非常に高いという。

 人手不足が深刻化していることから、製造業派遣のUTホールディングスの経営環境も良好。総還元性向50%を目標に掲げており、前期はすべて自社株買いに回してしまったために無配だったが、今期は復配の可能性が大だという。

「他に先駆けて総還元性向という言葉を用い、さらにその目標値を100%と定めたアマダホールディングスも見逃せません」(田村さん)

 総還元性向100%とは、「利益をすべて株主にお返しします!」という大盤振る舞いなのだ。同社は金属加工機械でトップクラスの実績を誇っており、業績も絶好調だ。これに追随し、半導体商社の菱洋エレクトロも総還元性向100%を目標に定めている。

「株主還元に関して、アマダと並び称されるのが王将フードサービスでしょう。やはり、総還元性向100%を目標としていますし、株主優待の内容も好評で、株主に優しい会社として大人気です」(同)

 さらに、数年間の限定ではあるものの、総還元性向100%以上の目標を掲げているのがインテリア商社のサンゲツだ。利益以上の還元を行えるのは、内部留保が潤沢にあるからこそ。

◇株主還元に積極的な姿勢で今期も好業績が見込まれる企業(銘柄名/株価[円]/配当利回り[%]/どんな企業? 還元に対する姿勢は?)
1.大東建託/13760/2.9/配当性向50%目標。相続税法改正で節税対策による建築需要が旺盛。今期はすでに増配を発表
2.積水ハウス/1862/2.9/配当性向40%、総還元性向60%目標。相続税法改正で節税対策による建築需要が旺盛。連続増配中
3.UTホールディングス/522/今期無配/製造業派遣大手。総還元性向50%目標。製造業向け派遣好調。15年期無配も大規模自社株買い発表
4.北の達人コーポレーション/820/2.07/健康食品などネット販売。機能性食品が好調で最高益連続更新中。株主優待の新設等も
5.アマダホールディングス/1187/2.19/金属加工機械で国内トップ級。配当性向50%、総還元性向100%目標。人件費高騰でアジアの需要旺盛
6.アイナボホールディングス/719/3.06/住宅設備機器販売。自己資本比率が5割超と高く、積極的な株主還元を明言。連続増配中
7.ピープル/1287/3.57/乳幼児向け玩具販売。配当性向100%目標。知育用がロングセラー。訪日中国人が“爆買い”
8.菱洋エレクトロ/1385/2.17/半導体商社。ROE5%達成のために、総還元性向100%目標。スマホ向け液晶が好調
9.サンゲツ/1819/2.06/インテリア商社。配当性向の過去実績は5~6割程度。増配などを積極的に行う可能性
10.東京ガス/677.5/1.48/総還元性向60%目標。電力の小売参入で16年以降はガスと電力のセット販売が可能。中長期的に期待
11.メイテック/3805/2.65/技術者派遣大手。配当性向50%、総還元性向100%以内の範囲で、その他の還元策も目標
12.王将フードサービス/4215/2.37/配当性向40%、総還元性向100%目標。人気優待銘柄。株主還元に極めて積極的な企業
注:株価は5月1日の終値

週刊朝日  2015年5月22日号より抜粋

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