事故のもう一つの原因は、操縦士がトイレに立った後、ルビッツ氏が操縦室の扉を内側からロックし「密室」をつくり出してしまったことだ。2001年の米同時多発テロ事件の後、扉の防護対策が強化されたことが仇になった。元日航機長の石津晃(こう)氏は、操縦室の少人数化を指摘する。
「昔は機長、副操縦士の他に計器を見てスイッチを操作する航空機関士や、月や星を見て航路を決める航空士の計4人がコックピットにいた。今は自動操縦の技術が進んで操縦に必要な人数が減った一方、機体の大型化で乗客は増え、操縦士にかかる責任が重くなった」
一方で、待遇面は厳しくなっているという。元日航チーフパーサーで航空評論家の秀島一生氏がこう指摘する。
「欧州メディアの論調は、LCCの厳しい労働条件が乗組員を追いつめているのではないかというもの。私が現役の頃は月間フライトタイムは最大でも80時間程度だったが、LCCでは100時間は当たり前。疲労がたまれば精神面に悪影響があるかもしれない」
元航空ジャーナル編集長の青木謙知氏もこう語る。
「競争の厳しい欧州のLCCでは操縦士でも年収300万~400万円はざらで、高給取りではない。短距離のピストン輸送が多く、休憩時間も短くなりがちです」
副操縦士の心の中で何が起きていたのか。捜査の行方が注目される。
※週刊朝日 2015年4月10日号