重要なのは、彼をかくまっていた元女性信者を自首させないと2人とも刑が重くなるということだった。平田は彼女の自首に同意して、私にだけ、彼女の電話番号と居場所を話してくれた。彼女は一旦、犯人蔵匿罪で指名手配されたんですが、そのあと、指名手配が解かれたんですよ。彼女はもう罪になることはないんじゃないかと誤解していてね。私が電話で「犯人蔵匿罪は、住まわせたりして逃亡を助けていれば継続しているから、まだ時効なんて完成してないよ」と教えてあげたら、彼女は「じゃあ自首します」と了解したから、私が大阪へ車で迎えに行って、その車に段ボール6箱を積んで、付き添って自首させたんです。

 平田と彼女との利益対立を避けるために、私は10日間で平田の弁護人からは降りました。オウム元逃亡犯の菊地直子が逮捕されたとき(12年6月3日)は、親から弁護人になってくださいと依頼されて、面会に行った。菊地とは一度会っただけです。菊地本人が「親にいろんな迷惑をかけたくないから国選弁護人にしてください」と希望したので、私は辞退しました。

 12人の死刑囚の刑は執行すべきではない。殉教者になってしまう。

 12人は東京・小菅の東京拘置所に収監されていますが、拘置所にも問題がある。狭い部屋にいるだけで、家族と弁護士以外に会えない。近くに命あるものがない。平田信が反省して出頭したのはあの年に、ずっとかわいがって飼っていたうさぎが、自分のおなかの上で死んでしまったからです。その現実感と命の重さをつくづく感じたんだと思います。死刑囚はみな、ヒヤシンスを栽培させてやるとか、現実感覚を取り戻すことをやらないと、現実の反省を深めていくことができないのではないかと思います。

(本誌取材班=上田耕司、牧野めぐみ、原山擁平、福田雄一/今西憲之)

週刊朝日 2015年3月27日号

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