写真・図版(1枚目)| 「木綿のハンカチーフ」の太田裕美は今でもアイドル?
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「なごり雪」の伊勢正三(いせ・しょうぞう)、「木綿のハンカチーフ」の太田裕美(おおた・ひろみ)、「学生街の喫茶店」の大野真澄(おおの・ますみ)の3人が2004年に結成した「なごみーず」。還暦を超えてもなお、全力疾走し続ける彼らが、太田裕美デビュー当時のお互いの印象や、誰もが知っている名曲を歌い続ける心境について熱く語った。司会は音楽評論家・富澤一誠。

*  *  *

──ところで、デビュー当時、太田さんは先輩の2人をどう見ていた?

太田:大野さんと初めて会ったのは、ペニーレインというフォークシンガーが集う原宿のバーでした。大野さんは飲み屋のおじさん。そういう印象しかなかったの。

伊勢:今もそのイメージは変わらないよね。

太田:デビュー当時は、よく学園祭に呼んでいただいて、風(伊勢正三が75年に結成したバンド)の前座もやっていました。正やんとは、そのころからご一緒しているんですよ。「君と歩いた青春」をカバーさせてもらったし、不思議な縁を感じますね。

──あの曲は名曲ですよね。

太田:「12ページの詩集」というアルバムで、イルカさんや宇崎竜童さんに1曲ずつ書いていただいたんです。正やんに頼んだら、まだ発売される前の風のアルバムから好きな曲を選んでいいと太っ腹なお答えがきたの。ポーンとカセットテープを渡されて、この歌を歌いたいと思ったのが「君と歩いた青春」。

──目利きならぬ、耳利きですね。

太田:ね、そうでしょ!? ファンのうけがよくて、コンサートで育ててきた宝物の曲なんです。でも正やんは「え、こんな地味な曲を選んだんだ」って思ったらしいんですよ。私が選んだ曲はこんな素晴らしいものだったじゃないかと、自分で偉いなと思う(笑)。

伊勢:でも、裕美ちゃんとはほとんど話もしたことがなかったよね。

太田:だって全然口きいてくれないんだもん!

伊勢:違う世界の人だと思ってた。アイドルだったから……。

太田:アイドルじゃないし!

伊勢:今でも十分アイドルですよ~。まさかこの年になって、「木綿のハンカチーフ」を自分が演奏して、「いいえ~♪」なんてコーラスするとは夢にも思わなかったね。これもまた、ぐっとくるんだよな。

──なごみーずのコンサートは、誰もが知っている名曲ばかりです。数え切れないほど歌っていると思いますが、心境の変化はある?

大野:コンサートの選曲もほとんど変わっていないんです。でも、その時々でいつも新鮮なんですよ。

太田:大野さんも正やんもいっぱい名曲があります。200回も聴いていたら飽きると思うでしょ? でも、自分の歌は飽きても、2人の歌は、何度聴いても、何度演奏しても飽きない。「あー、やっぱりいい曲だな」って思っちゃうんです。

大野:正直、「学生街の喫茶店」は、歌うのが難しいんだよね。今日はめちゃくちゃ下手だったなってよく反省している。いつも安定しないんですよ。

伊勢:ボーカルが下手って言うなら僕の立場がない。

大野:毎回ちゃんと歌わなきゃっていうのがある。しっかりリハーサルをやって、本番に臨みたい。

太田:楽屋に帰っても歌ってるもんね。

伊勢:旅先のホテルで「ラジオからいい曲が流れているな」と思ったら、ボーカルが部屋で練習していたってこともあったよ。

一同:(笑)

週刊朝日 2015年3月13日号より抜粋

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