司馬遼太郎さんをしのぶ第19回菜の花忌シンポジウムが2月7日にNHK大阪ホールで行われた。今年は大坂の陣から400年で、この戦いをとりあげた司馬作品『城塞』について、女優の杏さん、静岡文化芸術大学教授・磯田道史(いそだ・みちふみ)氏ら4人のパネリストが登壇。司会の元NHKアナウンサー・古屋和雄氏に作中で惹かれる登場人物について聞かれた杏さんは意外な歴女ぶりがあらわに。
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杏:カラッとしたキャラクターでいうと塙団右衛門がすごく気になります。今まであまり知らなかった人物で、こういった気風の方がいたのかと。目の前にある脅威に心を動かされずに果敢に散った「かつての戦国人」と評されています。関ケ原合戦でもう戦国が終わり、当時すでに「あの時代」を知っている人と知らない人とのジェネレーションギャップが存在していたと思います。ある意味、古きよき時代の魅力をその当時もっていた方だったと思いました。
古屋:杏さんは新選組のなかでは2番隊組長の永倉新八が好きだと聞きました。非常に渋いですね。
杏:永倉新八って、幹部のなかでも生粋の武士なんです。生まれたときから死ぬまで武士を貫き通した。塙団右衛門は逆に新選組の人たちに近いというか。もともと猟師だとか農民だとか諸説あるけれども、一気に駆け上がって武将たちのなかに名前が入った。磯田先生、私が変なこと言ってたら、援護射撃してください。お願いします。
古屋:お二人は友達なんですね。
磯田:杏さん、すごいんです。大阪での「ごちそうさん」の収録直前にきた本の礼状のメールが、「今、真田幸村討死の地にいます」でした。たぶん安居神社だと思うのですが、こんなメールとか手紙を書いてくる女優さんを初めて見ました。
杏:歴女という言葉を使われることが多いのですが、歴史に詳しいというより歴史が好きという立場です。今日も皆さまの話を学びに来たので、私は本格的なことは言えません。『城塞』のいろんなキャラクターの中でも流されない自分をもっている人物が好きです。「七度牢人せざれば武士とは申せず」みたいな当時の台詞も書いてありました。すごく合理的で、人に仕えるのが当たり前でありながら、自分を曲げないのが難しいけど格好いい、と評していますが、そのとおりだと思います。
※週刊朝日 2015年3月13日号より抜粋