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 滋賀、沖縄、佐賀の県知事選で、推薦候補が敗れた自民党。4月の北海道大分県の両知事選では現職を支援するが、野党は強力候補を擁立し、激戦がささやかれている。安倍改革への地方の反発から「落選ドミノ」につながると心配する声も出てきた。安倍晋三首相は切り抜けられるのか。

 北海道と大分の両知事選の情勢は当然、安倍首相の耳にも入っている。首相は17日、4月の統一地方選で民主候補と戦う両知事選を「重点選挙」と位置づけ、茂木敏充党選対委員長に全力で取り組むよう指示した。

 自民党は昨年7月以降、主要野党と相乗りになったケースを除いて、滋賀、沖縄、佐賀の県知事選で3連敗。滋賀では原発再稼働、沖縄は基地移転、佐賀は農協改革が争点の一つになった。

 連敗で安倍政権は、野党から「地方の声をもっと聞け」「強引に政策を進めるな」と厳しい批判にさらされた。さらに北海道と大分で敗れれば、改革の推進力が失われかねない。

 自民党のあるベテラン議員は言う。

「首相はいまの通常国会を『改革断行国会』と位置づけている。農協の次は医療、雇用、エネルギー分野にメスを入れたい。もし両知事選に負けると、次の改革になかなか手を突っ込めなくなる。是が非でも勝利したいでしょう」

 別の自民党関係者は、両知事選の結果次第で、首相が執念を燃やす来夏参院選での3分の2以上の議席獲得に、黄信号が灯ると指摘する。

「自民党は地方議員選、首長選に勝ち、足腰を強化することで、国会議員の選挙を優位にしてきた。知事選で負ければ、相手候補にスリ寄る県議や市議が出て、組織の結束が弱まり、国政選挙に悪影響が出る。参院選で一部野党を含め3分の2議席を獲得し、憲法改正を目論む首相にとって、知事選の負けは許されない」

 安倍首相は2月7日、党本部での全国幹事長会議でこう檄(げき)を飛ばした。

「統一地方選に勝ち抜いて、来年の参院選挙につなげていきたい。それは政策を前に進めるためのものであり、再び日本が世界の真ん中で輝く国になるためのものだ」

 有権者の審判はいかに。

週刊朝日 2015年3月6日号より抜粋