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 このままでは近い将来、介護職員が不足してしまう日本。働き手の確保が急務だ。安倍政権は、「外国人技能実習制度」に介護分野を加える方針を決めた。

 だが、制度自体への異論も多い。そもそも、労働力不足を補うための制度ではないため、一時しのぎの対応といえる。

 淑徳大学総合福祉学部の結城康博教授は言う。

「実習生といいながら製造業や農業で日本人がやりたがらない分野の労働力を補填しているだけ。政府は介護職を単純労働として捉えているとしか思えない」

 結城教授は外国人受け入れに反対なわけではない。優秀な人もいるし、日本人もよい刺激を受けることがある、と評価はしている。

「介護に興味がない人が訓練なく入ったら、現場が混乱する。それが心配」

 外国人労働者の問題を長年取材し、『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)などの著書があるジャーナリスト・安田浩一さんも、技能実習制度に介護が加わることに反対だ。

「技能実習制度は見直すというよりも廃止すべき。建前は国際交流とか技能移転として運営されてきたが、その理念にのっとった運営のされ方を見たことがない。技能実習制度は、人手不足の穴埋めと賃金コストの上昇を抑えるため。それ以外の理由はない」

 高度な技術を学ぶなんていうのはキレイごとだ、と安田さんは言う。外見上は技能実習制度が成功しているケースでも、何らかの形で労働法に違反している、とも。

 技能実習制度は雇用主が外国人に強い影響力を持つ。EPA(経済連携協定)は資格を取得すれば転職ができるが、技能実習制度にはその自由がない。

 安田さんが昨年、実際にみた例をあげてみよう。

 北陸のある地域。縫製工場で、中国から来た20代の技能実習生が働いていた。

 この女性が、同じ地域に住む中国人と恋に落ち、外泊をした。そのことが工場長に知れると、女性は即刻、空港に連れていかれた。

「帰れ! ルール違反だ」

 女性は、強制帰国させられた。恋人との間をひきさかれただけでなく、日本での仕事も奪われて……。

 安田さんは言う。

「団体管理型というシステムで厳しく監視されて正常な労使関係が存在しない。支配と従属の関係しかない」

 お金の問題も大きい。まず賃金が安い。10年の入管法改正後、「最低賃金を守れ」という通達がされたが、いまだにピンハネする雇用者がいるという。

「一見、最低賃金を守りながら、光熱費や手数料、私が見た例ではおやつ代まで引いて賃金を搾取していた」(安田さん)

週刊朝日 2015年2月27日号より抜粋