Moment’s NoticeCharlie Rouse
Moment’s Notice
Charlie Rouse

 チャーリー・ラウズには、あのセロニアス・モンク・カルテットのテナー奏者というイメージが強烈に付きまとっている。つまり、いわゆる“モンクス・ミュージック”の構成要員として、ジャズファンの記憶の整理箪笥にしまい込まれているようなのである。かく言う私自身が、ラウズを一個のジャズマンとしてキチンと見ていなかった。

 と言うのも、歴代モンク・カルテットのテナー奏者には、ソニー・ロリンズだとか、ジョン・コルトレーンといった超大物が雁首をそろえ、ラウズの直前のメンバーだって、ハードバップ・ファンなら知らぬ者もないジョニー・グリフィンだ。要するに、アルバム・リーダーとしてのラウズの存在が盲点化していたのである。

 そんな時、オッと言わせる作品が出てきた。今まで聞いたことも無いレーベルで、どうやら本拠は北欧デンマークのよう。時代は1977年、まさに“70年代ハードバップ・リヴァイバル”の真っ盛り。ためしに購入してみたら大当たり、というやつだ。

 出だしから快調なハードバップ。ちょっとくすんだような、それでいて底光りするラウズのテナーの音色がマイナー曲調にジャストフィット。ドライヴ感の効いたノリ、情熱を内に秘めた勢い、これがたまらない。要するに、ハードバップ・マニアの琴線に触れる要素が完璧に揃っているのだ。続いてソロをとる、ヒュー・ローソンのピアノがまたいい。弾み良く快調にフレーズを重ね、ダークなテナーの音色と好ましい対比を形作っている。それもそのはず、黄昏色の名調子、冒頭の《The Clucker》はローソンのオリジナル。そして同じくローソン作、3曲目のこれもマイナー・チューン《Joobbie》も名曲。曲良し演奏良しで言うことナシ。

 ベースのボブ・クランショウもドラムスのベン・ライリーも取り立てて気負っている様子はないが、実に気持ちよさそうに演奏を推し進めている。まさに職人芸。録音はニューヨーク。ヨーロッパ目線がフュージョン真っ盛りのニューヨークから、オーソドックスながらいまだ侮り難い力を秘めたハードバップ・ミュージシャンの小傑作を生み出したのだった。ちなみに、同レーベルから出されたヒュー・ローソンのリーダー作『プライム・タイム』もおススメです。

【収録曲一覧】
1. The Clucker
2. Let Me
3. Joobobie
4. Well You Needn't
5. Royal Love
6. A Child Is Born
7. Little Sherri
8. Royal Love
9. Let Me
10. The Clucker
11. Well You Needn't

CHARLIE ROUSE (ts) HUGH LAWSON (p) BOB CRANSHAW (b) BEN RILEY (ds) Recorded October 20,1977