ジャコに飽きた人にこそ聴いてほしい初期ライヴの決定版
City Center 1976 / Weather Report (Cool Jazz)
マイルスの新着音源が途絶えたチャンスを活用しての、マイルス関連ミュージシャン新着音源紹介。今回はウェザー・リポートの登場です。いま、ふと思ったのですが、このコーナーでウェザー・リポートを紹介するのは珍しいかもしれません。その理由のひとつに、音源が多発しすぎているということが挙げられますが、マイルス同様、すでに主要音源が出揃ったということもあります。
さらにもう一点、ジャコ・パストリアス時代のウェザーに飽きてしまったという個人的な理由もあります。もっとも「個人的」という言葉を使いましたが、多くの人が同じような感想をもっているのではないかという読みもあります。つまりジャコ時代のウェザーは、ごく初期を除いて、完全に飽きられている。これがぼくの印象なのですが、どうでしょう。
では、どうして飽きられたのか。ひと言でいえば、過剰にパターン化してしまったということになると思いますが、その要因のひとつに、リズム・セクションとの相性があったのではないかと考えられます。ピーター・アースキンとは、相性が良すぎて、スリルが生まれにくく、それが飽きにつながった。ところがジャコ時代のウェザーが面白かった時代というのは、ドラムスがアレックス・アクーニャ、パーカッションがマノロ・バドレナだったのです。そしてジャコとの相性は、悪くはなかったが、のちのピーター・アースキンほどには良くなかった。しかしそれが演奏に刺激と創造性を生む要因になっていた。とまあ、そのように考察する、新年のある日の昼下がりというわけです。
今回ご紹介するライヴは、ジャコが公式にウェザーに参加して約2か月後というホヤホヤの音源。そのジャコを核としてアクーニャとバドレナがリズム・セクションを形成し、ウエイン・ショーターがバリバリと吹きまくっていた時期のライヴということで、これはもうたまりません。《ドクター・オノリス・コウサ》と《ディレクションズ》に突入する寸前には、あの《バードランド》の初期ヴァージョンが即興的に飛び出したり、それはもうスリリング。他は主に『ブラック・マーケット』からの選曲となっています。1曲目がショーター作《エレガント・ピープル》というのも泣かせます。
ジャコに飽きた人にこそ聴いてほしい、そしてたしかにジャコ・パストリアスという天才ベーシストがいたことを思い出していただきたい、最高最強のライヴ音源ではないでしょうか。ぼくたちは、ほんとうに惜しい才能を失くしたものです。ともあれ、このライヴ、強く激しく推奨したいと思います。
【収録曲一覧】
1 Elegant People
2 Scarlet Woman
3 Barbary Coast
4 Come On Come Over
5 Portrait Of Tracy
6 Cannonball
7 Black Market
8 Drum Solo / Conga Solo
9 Birdland / Dr. Honoris Causa / Directions
10 Blackthorn Rose
11 Gibraltar
Joe Zawinul (p, key) Wayne Shorter (ts, ss) Jaco Pastorius (b) Manolo Badrena (per) Alex Acuna (ds)
1976/6/30 (NY)