老眼鏡はちゃんと作ったんだが、運転用には適さないと初めて知る無知っぷり……(photo 本人提供)
老眼鏡はちゃんと作ったんだが、運転用には適さないと初めて知る無知っぷり……(photo 本人提供)

 関所を通過できる気がせず大いに焦るも、一旦乗った効率的な流れに容赦なく運ばれてアッと言う間に検査機の前へ。案の定、一昔前ならバカにしてるのかと思うほどデカい「C」の記号が恐ろしく滲んでいる。だがもうどうすることもできず、全集中の目力で「右!」「上!」と答えたら奇跡的に合っていて、なんとか更新を果たしたのだった。

 まずはホッとしたが、よく考えたらこのまま行けば5年後の更新は確実にアウトだろう。運転用眼鏡を作ってなんとか通過しても、70を過ぎれば身体や脳の衰えの検査が待っている。次々と課されるハードルを私はいつまで越えることができるのか……っていうかそもそもこんな目で車を運転すべきかどうか。そう思うと、これが最後の更新になるかもしれない。私の前の扉は次々と閉じていく。そういう年代に入ったのである。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

AERA 2023年2月20日号

暮らしとモノ班 for promotion
【Amazonブラックフライデー】11月27日から先行セール開催。2024年の開催日程や目玉商品50選、お得なキャンペーンも紹介!