「今回の解散に大義なんかないよ。安倍さんが『自分のため』にやる解散なんだから──」

 自民党のあるベテラン議員は、本誌の取材にこう声を荒らげた。

 あれよ、あれよという間に確定的になった「12月14日総選挙」。安倍首相は来年10月に予定される消費税率10%への引き上げを先送りし、早ければ11月19日にも解散する。

「景気の回復が遅れているため、2012年6月に民主・自民・公明で決めた消費増税を先送りする。アベノミクスの失敗という声も上がっているが、審判を受けたい」というのが解散の理由のようだ。

 とはいえ、衆院の任期はまだ2年以上も残っている。自民党は衆院で約300の圧倒的な議席を持ち、衆参のねじれもない。安倍首相がアベノミクスを継続したければ、いくらでも法案を通せる状況にある。なぜいま、解散に踏み切るのか。

「政権の延命のため」と指摘するのは前出のベテラン議員だ。

「来年は(原発再稼働や集団的自衛権行使容認の法整備など)数多くの難関が待ち構えている。沖縄県知事選では米軍普天間飛行場の辺野古移設を掲げた現職の仲井真弘多知事が苦戦。首相が力を入れる拉致問題の解決もメドが立たない。内閣支持率の下落が止まらなければ、来年9月の総裁選での再選は危うい。それなら野党の態勢が整っていない今、選挙をやって議席を維持し、課題をリセット。『国民の信を得た』と4年間、好き勝手にやるのが狙いでしょう」

 首相の宿願は言うまでもなく憲法改正。昨年7月にはテレビ番組で「憲法9条を改正し、自衛隊の存在と役割を明記していく。これが正しい姿だろう」と述べ、自衛隊を軍隊として位置づける必要性を強調した。与党に有利なうちに選挙をやり、一部の野党との連携を深め、4年のうちに改正に踏み込むのが最終的な狙いだろう。

週刊朝日 2014年11月28日号より抜粋