マイクロソフト日本法人のトップとして、日本のIT業界の草創期を支えた成毛眞さん。大の読書家としても知られ、主宰する書評サイト「HONZ」で紹介されてベストセラーになった本は数知れず。
作家・林真理子さんとの対談で、マイクロソフト時代を振り返り、ビル・ゲイツの愛称に関する逸話を披露した。
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林:成毛さんって、サラリーマンの憧れの存在なんじゃないですか。マイクロソフト(日本法人)に入って、若くして社長になって、やめて自分で会社を立ち上げて、本を読んで教養を深めながら自分で本を書いて、しかもそれが売れてという。
成毛:そうですかね。本人は遊んでるだけというか、シャレで生きてたらこうなったという。
林:言わずもがなですけど、一生働かなくてもいいぐらいの資産は、マイクロソフト時代にもらってたわけですね。
成毛:当時、すべてのIT企業で給料がいちばん安かったんですよ。社長なのに1200万ぐらいしかもらってなかったんです。
林:あら、そんなものですか。びっくりです。
成毛:そのかわりストック・オプションという株をもらってたんですけど、その株もややこしいんです。30年ほど前、ベンツの中古を買ったんですよ。「人生初めての外車だ」とか言って。二、三百万だったんで、その分の株を売ったんですが、もしそのときの株をずっと持っていたら、それだけで10億ぐらいになってたんですよ。でも、いまではパーです。
林:うっ……。
成毛:「あのときの○○」という話は、当時の社員はみんな持ってるんです。まさかこんなに上がると思ってないから、みんな売っちゃうんです。ビル・ゲイツですら、株の値段がこうなるとは思ってませんでしたからね。
林:ビル・ゲイツさんってアメリカの長者番付1位で、総資産が8兆円だそうですね。8兆円というと、国家が一つ買えちゃいますよね。
成毛:でも、ずいぶん下がりましたよ。99年のピーク時の時価総額は70兆円。ビル・ゲイツはその半分持っていました。
林:70兆! はァ……。
成毛:社内ではみんな「お豆腐屋さん」と呼んでたんですよ。
林:お豆腐屋さん?
成毛:自分の資産を1チョウ2チョウと数えるのは、豆腐屋とビル・ゲイツぐらいだろうって。
林:なるほど(笑)。
※週刊朝日 2014年11月7日号より抜粋