作家の室井佑月氏は、普天間基地移設を巡る安倍政権の対応についてこういう。
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8月17日付の産経新聞(電子版)にこんな記事が載っていた。
「沖縄防衛局は17日朝、米軍普天間飛行場の移設先、名護市辺野古沿岸部の埋め立てに向け、海底ボーリング調査に使う台船の海上設置作業を開始した。――中略――台船を設置し状況が整い次第、埋め立て地盤の強度を調べるため、海底の掘削を開始する」
海底の掘削をはじめたら、珊瑚は死んじゃう。環境は破壊される。
今年の1月の名護市長選では、辺野古への基地移設に反対する現職の稲嶺進氏が、移設推進の自民党推薦候補と戦い、再選された。ということは、地元のみなさんは辺野古への移設反対派が多数ってことだ。
たしか選挙で負けた後、自民党の石破幹事長や公明党の山口代表は、渋い表情で、
「厳粛に受け止める」
とかいってなかった?
厳粛に受け止めた結果がこれかい? 軽いな。
そうそう、同日の産経新聞の社説に、
「安倍晋三首相は4月の日米首脳会談で、辺野古移設を『強い意志をもって早期かつ着実に進めていく』とオバマ大統領に約束した」
と書かれていた。そして、8月15日付の朝日新聞には菅官房長官のこんな発言が載っていた。
「『辺野古は米国との約束だ。ありとあらゆる手段で準備に万全をつくせ』。昨年末、仲井真弘多知事から辺野古の埋め立て承認を取り付けた菅義偉官房長官は反対派への対策を事務方に指示。菅氏は『10年前は対策が甘かった。今回は違う』と自信を見せる」
あのさ、この国の政府は、この国のために動くものだよね?
「アメリカ様の意向に沿って、この国を自由に動かしてみせます。キリッ!」
そういって、威張っているように見えるのはあたしだけかしら?
てなことをいうと、隣国の脅威からこの国を守るため日米同盟は最も大切だ、という人がいる。
アメリカとの同盟が大切なのはわかる。でも、ほんとうの意味でアメリカと手と手を取り合っていきたいというなら、日米地位協定くらいはどうにかしてほしいものだ。
沖縄では米兵による犯罪が起きている。犯罪自体も許せないが、その後の対応でも地位協定によって耐え難い思いを強いられている。
地位協定について、政府は交渉しているんだろうか。
この国の政府は、なぜあたしたちのために動いてくれないのだろうか。なぜ簡単に、あたしたちの命や財産やプライドを差し出すような真似をするのだ。アメリカとの約束ってのは、あなたたちには絶対なことみたいだが、あたしたち国民への説明にはならない。そこの部分を含め、格好つけずにきちんと一度、説明してほしい。
11月には沖縄県知事選がある。県という大きな単位での怒りをぶつければ、さすがに政府もあたしたちの顔を見るのかしら。
※週刊朝日 2014年9月5日号