認知症予防の鍵を握るのは、食や運動だけではない。病気や生活習慣、嗜好品なども認知症の発症リスクを高める可能性があり、それらの改善が予防につながることがわかってきている。
喫煙は血管を収縮させて血液の流れを悪くし、動脈硬化を促進させる。このため、心筋梗塞や脳梗塞といった病気の原因だけでなく、認知症のリスクにもなる。
喫煙が認知症発症の危険因子であることは、今年6月に報告された福岡県久山町の住民を50年以上にわたって調査している「久山町研究」の結果からも示されている。
この調査は、1988年に健康診断を受けた高齢者約700人を「喫煙」「過去に喫煙」「非喫煙」の三つに分けて15年間にわたって追跡した結果をまとめたものだ。この間、約200人が認知症になったが、喫煙者は非喫煙者に比べて、認知症の発症リスクが2倍になっていた。過去に喫煙していた人と、非喫煙者では差が出なかった。久山町研究を主導する、九州大学大学院環境医学の清原裕教授はこう話す。
「この調査では、40代、50代の中年期以降も喫煙を続けている人はリスクが高くなっていました。一方で、老年期で禁煙した人ではリスクが減っていました。今すぐにたばこをやめればまだ間に合うかもしれない、ということです」
※週刊朝日 2014年8月22日号より抜粋