舞台やテレビで大活躍の俳優・城田優さん。作家・林真理子さんとの対談で、両親について話した。

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林:城田さんはお母さまがスペインの方なんですよね。

城田:そうです。母は僕の父と結婚する前、日本人と結婚して日本に来たんですが、うまくいかずにお別れしたんです。そのころ、母はテレビのリポーターの仕事を始めていて、そこで放送作家をしていた僕の父と知り合ったみたいなんです。

林:城田さんは、お父さまから知的な文化を、お母さまからパワフルでグローバルな心を受け継いだんですね。

城田:母はとにかく家族思いな人ですが、威厳があってすごくコワい人でもあったんです。だからあまり反抗期もなかったですね。学校の成績が悪くてもなんにも言われないんですが、食事を残すとか、家庭のしつけという部分では非常に厳しく教育されました。

林:そうなんですか。

城田:僕が10歳か11歳のころ、父とも離婚したんです。女手一つで育てなきゃいけないという覚悟もあったのか、ついつい手が出ることもありました(笑)。内心、おびえながらやっていたみたいです。母は当時、すごく頑張っていたということが、いまはわかります。

林:いまもしょっちゅうお会いするんですか。

城田:僕はいま一人暮らしをしてるんですけど、ときたまうちに来て、ベランダの花や木の世話をしたり、部屋の掃除をしたりしてます。僕もいいトシなんで、母親が家に来て掃除してるなんて恥ずかしいんですけど、母がやりたがってるので、断ったらかわいそうだなと思って。

林:やさしいですね。ところで城田さん、子どものころは日本語があんまりうまくなかったってほんとですか。

城田:う~ん、自分の日本語がどの程度だったのかは、正確にはわからないんですが、僕は日本で生まれて2歳からスペインに住んでいたんです。父とは日本語で話していたし、まったくしゃべれなかったわけではなかったんですが、小学校2年生のときに日本に帰ってきたときはボキャブラリーが少なかったですね。「掃除機」と「正直」が区別できなかったりしました。それから、「ボク、いま何歳?」って聞かれたときに、「ボクって自分のことじゃないか。何言ってるんだろう、この人は」とか……。

週刊朝日 2014年8月22日号より抜粋