ザ・ビートルズが初来日コンサートをやった後の武道館で、日本人ではじめてライブをしたのは、“エレキの若大将”こと、加山雄三だ。8月には武道館単独公演の最年長記録を更新するという。喜寿を迎えてなおロックバンドを率いて精力的に活動を続ける秘訣とは――。

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――7月27日には「フジロックフェスティバル」、8月14日には「EX THEATER ROPPONGI」にも出演されます。目前に控えて、仕上がりはどうですか?

加山:とにかく雰囲気がいいんですよ。先日、スタッフも一緒になって35人で船に乗ってきたんですけどね、食いたいだけ食って、飲みたいだけ飲んで、本当にもう最高の一日でした(笑)。メンバーと年は離れているけど、音楽でつながってるんでね、意思の疎通はバッチリだと思いますよ(笑)。

――「若大将EXPO」では目玉として8月23日に日本武道館でコンサートを予定されています。こちらはどのような内容ですか?

加山:僕の誕生から現在にいたるまでの時代の移り変わりを、写真や映像を交えてみんなと追体験できるような構成になっています。音楽のジャンルはさまざまで、曲数が多いから、大変(笑)。

――武道館の単独公演としては、ご自身が3年前に打ち立てた最年長記録を更新されるそうです。

加山:いつかは破られる記録だと思うけど、嬉しいですね。実は武道館ではじめて音を出した日本人は僕なんじゃないかな。66年に「ザ・ビートルズ」が武道館でコンサートをやった後、映画「南太平洋の若大将」のロケで柔道のシーンを撮影したときのことです。集まってくれたファンに感謝の気持ちを伝えたくて、「ザ・ランチャーズ」と一緒にその場でエレキをプレイさせてもらったんですよ。

――多くの伝説を残しながら、50年以上も歌手として第一線で続けてこられた原動力は何でしょうか?

加山:音楽は趣味。僕にとっては生涯の親友です。ある人に、「これでメシを食おうとすると音楽に対する愛情がなくなっちゃうのよ」って言われたこともあって、自分のことをプロのミュージシャンだなんて思わないようにしているんです。いまでも職業欄には俳優って書いています(笑)。

――とはいえ、加山さんはいまでも世代を超えた多くのミュージシャンから尊敬を集めています。

加山:長年、ただひたすらに幅広い音楽仲間と、共演を重ねてきたってことだと思います。僕は音楽の広さや豊かさを、ファンも含めてみんなで共有したくて、やってきただけ。それが若いころからずっと変わっていない、77歳のいまでも思っていることですね。

(本誌・福田雄一)

週刊朝日  2014年7月25日号より抜粋