SARS(サーズ)パニックを覚えているだろうか。
2003年、中国を中心にSARS(重症急性呼吸器症候群)の感染者が大量発生し、死者も続出した。感染をおそれて、日本人の出国者数は海外旅行の自由化以来最大の落ち込みとなり、アジア地域から訪れる観光客も激減。感染者の日本上陸に備え、宇宙服のような防護服で全身を包んだ自治体職員たちの訓練が全国で繰り広げられた。
あれから11年。厚生労働省は現在、新たな感染症を、SARSと同じ「2類感染症」に指定する感染症法改正の準備を進めている。これが中東から広がっている感染症、MERS(マーズ=中東呼吸器症候群)だ。
危険度の高い「2類」に指定されると、感染者や感染の疑いがある人の入院措置や就業規制ができるようになる。これに先んじて5月28日には、2類感染症と同様の扱いができる「指定感染症」にMERSは指定された。
厚生労働省の中嶋建介・感染症情報管理室長が説明する。
「すでに中東から遠く離れた地域でも感染者が出ている。これも入院などの措置ができるようにした理由のひとつです。国内で感染が広がらないように、国として万全の態勢を取らなければならない」