「ユーロサトリ」の日本ブース (c)朝日新聞社 @@写禁
「ユーロサトリ」の日本ブース (c)朝日新聞社 @@写禁
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 安倍晋三首相(59)がアベノミクスの帰趨(きすう)を決める新たな「成長戦略」を発表する。成長戦略のいわば、「裏メニュー」として経済界の注目を集めるのが解禁された武器輸出だ。

 安倍政権は4月、これまで武器輸出を原則禁止していた「武器輸出三原則」を緩和。条件を満たせば輸出することを認めたのだ。防衛省関係者が語る。

「三原則の緩和は、防衛省の以前からの悲願でした。兵器を売って儲けたいというより、本当の狙いは今の主流である兵器の国際共同開発への参加です。これに入れないままだと技術的にも立ち遅れてしまうし、金銭的にも不利な条件で完成品を輸入することになってしまいますからね」

 防衛省は6月19日、武器などを購入する際の基本方針「防衛生産・技術基盤戦略」を44年ぶりに刷新。米国や東南アジアなどの友好国と防衛装備や技術などで協力していくとした。

 同20日までパリで行われた陸上兵器やセキュリティー製品の国際展示会「ユーロサトリ」では、兵器ではなくセキュリティー部門だが、日本が初めてブースを設け、13社が参加した。

「パラシュートを出品しようとした企業が『空挺団が使うものだから武器になる』と、経産省に止められたと聞いた。『武器商人』と批判されないよう、かなり慎重になっているようです」(前出の防衛省関係者)

 政府間の商談も活発だ。オーストラリアは最新鋭潜水艦「そうりゅう型」に興味を示しており、日本側は技術提供を検討中。インド政府との間では、3メートルの荒波でも着水できる救難飛行艇「US2」の輸出をめぐる交渉が続いている。日本製兵器は今後、起爆剤となりうるのか。

「日本製の性能は良いのですが、ネックは値段の高さ。売れる相手もハイテク装備は米国が認める友好国に限られるし、救難飛行艇などは大量に売れるものでもなく、大きな儲けにならない。現実的なのは、退役する小型護衛艦を東南アジアに売ったり、地雷探知機や化学防護服など、日本が得意な軽装備から地道に売っていくことです」(軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏)

 本格的な商売になるまでの道のりは険しい。

 安倍政権が描くこれらバラ色の成長戦略が実現する日は来るのか。国民はよく吟味する必要がありそうだ。

本誌・西岡千史、小泉耕平

週刊朝日  2014年7月4日号より抜粋