文筆家の北原みのり氏は、いまあるドラマにはまっているという。

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 フジテレビのドラマ「続・最後から二番目の恋」にはまってる。テレビの前でお腹抱えて笑う、みたいなこと、久々に味わっていて、木曜夜10時が待ち遠しいほど。

 とはいえ、このドラマ、「どんなドラマか?」と、説明するのが難しい。何か特別なことが起きるわけではない。ただ、ドラマの中では大人たちが、「女と男」について考え、時に困り、傷つきながらも、とにかくしゃべり続けるのだ。

 脚本家の岡田惠和さんは、50代の男性なのだけど、この人、どんな女性体験をされてきたのだろう? どんな女と付き合ってきたんだろう? と興味が湧くほど、女のことが分かりすぎていて、それは気持ち悪いほど。

 ドラマの中に、こんな台詞がある。何年も前に妻を亡くした主人公(中井貴一)に、やはり夫を亡くした30代の女性(長谷川京子)が、こう提案するのだ。

「セフレを前提としたお友だちになりませんか?」

 ああ、なんて女心を掴んだ台詞なのだっ! と、この台詞、私の周りで、めちゃくちゃ話題になってます。

 アラフォーの女。結婚生活も経験し、いくつかの恋愛も経てきた。恋愛や結婚への憧れもなく、それらが「どういうものか」は、何となく分かっている。今更、何かをゴールにするような「関係」はいらない。傷つけ合うような関係も、ほしくない。でも、信頼し、カラダを求め合えるような優しく気軽な関係はほしい。……これ、正に女の一つの本音ではないだろうか。

 対する中井貴一(真面目で誠実)は、え、え、せ、セフレ!? と目を白黒させつつ、「私はそういうことができる男ではない」と丁寧に断るのだが、それでも、長谷川京子は「頼む!」と“男らしく”踏み込んでくるのだ。

 セフレになりましょ、ではなく、セフレを前提としたお友だちから始めましょ、という細やかな提案、ぜひいつか使いたいです。

 岡田惠和さんが描く女の人は、「続・最後から二番目の恋」に限らず、男への欲望や苛立ちや諦めや希望が、生々しく描かれてる。そのリアリティに、女たちは夢中になるのかもしれない。

週刊朝日  2014年6月20日号