韓流好きを自認する文筆家の北原みのり氏。竹島問題をはじめ“嫌韓”の流れからか韓流の話題がメディアにあまりのぼらなくなったが、最近、韓流にはまった女友達がいるという。

*  *  *

 久しぶりに会った女友だちが「韓流にはまってしまった」と告白してきた。「今さら?」と驚いた。

 これまでずっと私は彼女に「韓流スターがやばい、エロすぎる」とさんざん言ってきたのだ。その度に彼女は「みのりもオバサンになっちゃったね」と冷酷な反応をしてきた。それなのに、たまたま見たドラマで、ヒョンビンというスターに恋をしてしまったと言うのだ。

「ヒョンビンのことを考えてたら、身体が急に熱くなっちゃってさ、夜中にマラソンしちゃった……」

 真夜中に近所の公園を5周くらい走って、性欲をしずめたのだと言う。あんたは男子中学生か!

 ちなみに彼女の夫はアフリカ系アメリカ人。若い頃にブラックミュージックにはまり出会った愛夫だ。

「なんで私の夫はアメリカ人なんだろう。私たちが若い頃に韓流があったら!」

 ……いや別に何も起きなかったと思うよ、と言いながらも、私はものすごく嬉しかったのだ。

 一時期メディアで見ない日はなかった韓流だが、政治状況のせいか、オヤジメディアを中心に話題にのぼらなくなっている。竹島の領有問題が騒がれた頃からは、妻が韓流にはまるのを夫が嫌がるなど、家庭内韓流トラブルも勃発していると聞く。そんな中、遅れてきた韓流ファンの存在は、やっぱりそうだよね! 韓流ってエロいよね! 女の欲望を満たすよね! とキャーキャー手を取り合いたくなるほど嬉しい。

 彼女はさっそくNHKの韓国語講座のテキストを買ったそうだ。韓流ファンの間では知られていることだが、韓流にはまる女はかなりの確率で韓国語を習いはじめる。彼女曰く、「ヒョンビンの言うことを、ヒョンビンの言葉で理解したいのっ!」。そう、恋心が語学学習に火をつけるのだ。ああ、韓流って、やっぱり凄い!

 数日後、また彼女から電話。「東方神起のCD聴いてたら、生理がきた」。もうとっくにあがったと思っていた2年ぶりの生理だったという……。実話です。女を取り戻し、恋心を取り戻す韓流。春ですね!

 女の欲望がまた、静かに蠢(うごめ)きはじめているようです。

週刊朝日  2014年4月18日号