「薄毛」は日本人男性にとって大きな悩み。年や遺伝のせいにしてあきらめている人も多いはずだが、最新の薄毛治療はどんなものなのか。ライターの伊藤あゆみ氏がその実態を調べた。
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加齢に従って髪が薄くなる進行性の脱毛症をAGAと言い、男性の薄毛のほとんどはこれにあたる。現在、日本皮膚科学会がAGA治療法として「強く勧められる」と認定しているのは、フィナステリドとミノキシジルだけだ。フィナステリドはAGAの進行を抑制し、ミノキシジルは発毛を促進する。この2種類を毎日使用するのがAGA治療の基本である。
毎日薬を使うとなると、副作用の心配はないのだろうか? その疑問に城西クリニック(東京都新宿区)の小林一広院長はこう答える。
「フィナステリドは、1~2%の人に性欲減退や勃起障害がみられると報告されています。ミノキシジルは塗り薬なので、頭皮が敏感な人は赤くなったりかぶれたりすることがあります。ただ、私たちの15年の経験から言えば、副作用が出る人は100人に1人もいません。かなり安全性の高い薬と言ってよいでしょう」
城西クリニックでは、この2種類の薬に加えて、生活指導やサプリメントなど独自の療法を提供している。とはいえ、2本柱の投薬治療が主であり、その他はサポート的役割なのだそうだ。
「私のクリニックでは、治療を始めて約3カ月後にすべての人に効果が表れ始めます。平均して1年後には、ほとんどの人が『その人なり』の発毛のピークを迎えます。その後は自己ベストをできるだけキープするため、あるいは自然現象としての老化のスピードを緩やかにするために、薬の使用頻度を減らすなどの治療を続行します」(小林氏)
AGAは見た目で大きく2タイプに分かれる。頭頂部から薄くなる「O型」と生え際が後退する「M型」だ。両者の違いは見た目だけで、治療方法はまったく同じ。なぜ2種類に分かれるのか、そしてなぜ頭頂部と生え際から薄くなるのかはわかっていない。そもそも、なぜAGAになるのか、つまり「なぜ男性は年を取ると髪が薄くなるのか」も完全には解明されていない。
進行の度合いは個人差が大きく、30代でツルツルになる人もいれば、70代でフサフサの人もいる。本人も専門医も「いつ、どの部分から、どの程度薄くなるのか」を予測するのは不可能だ。遺伝的素因が大きいのは確かで、父親や祖父、母方の兄弟や祖父を見ればある程度予想はつくが、確実ではない。
薄毛の悩みで同クリニックを訪れる人は月6千人弱。うち半数以上は20代、30代の若い男性だ。
「高齢になるとみんな薄いので気にならないのですが、若いうちは『自分だけが薄い』ので困るのですね。ただ、最近は60代、70代でも『治せるものなら治したい』と言って来られる方が増えています」(同)
※週刊朝日 2014年3月28日号