被災地の集会所は、人と人とを結ぶかけがえのない空間。建築家らがつくった“ゆとり”の場を歩いてみた。
東日本大震災で被災した石巻市や女川町などの宮城県沿岸部は、2月の寒波で記録的な大雪に見舞われた。津波被害を受けた広大な土地が、白く染まる。
震災後、被災者の生活に“ゆとり”を生み出そうと、無味乾燥な建物ではなく、自然素材や凝ったデザインをほどこした仮設住宅や集会所をつくろうという動きがあった。建築家の坂(ばん)茂氏が設計した、女川町の町民野球場内にある仮設住宅もその一つ。敷地内から聞こえてくるのは、雪かきをする音と、女性たちが裁縫を楽しんでいる集会所からの声だ。相談センターの伊藤恵悟さんが言う。
「元々小さい町で顔見知りでも、意外とお互いを知らないもの。でも、こうしてつくられた集会所がきっかけで顔を合わせ、趣味などを通じて新たに友人ができることが多いんです」
“仮設”が、より深くつきあえるきっかけをくれたのだ。
「その生き生きとした姿こそが、真の復興だと感じています」
※週刊朝日 2014年3月14日号