大学が競うように英語教育に力を入れている。国や自民党の方針も受けて、英語能力テストを活用し、外国人教師を増やし、英語のみで行う授業も導入を進めている。ただし、英語一辺倒への批判の声も出ている。

 週刊朝日では全国160の国公立・私立大学に、アンケートを実施。アンケートでは、TOEFLやTOEICなどの英語能力テストについてどんな支援を行っているのか尋ねた。すると資格試験を学ぶ講座があったり、受検料を一部または全額負担する大学など、TOEFLやTOEICのための支援をしている大学が半数近くに達した。

 もっとも、こうした英語一辺倒の教育には、批判的な声も出てきている。大学の英語教育に詳しい、慶応大学の大津由紀雄名誉教授はこう話す。

「多くの大学は、英語能力テストのスコアをあげる目的で授業をしている。点数をあげるためのテクニックを養うことばかりに注力してしまい、本来の英語の基礎力がついていない学生が増えています。本来、大学で行う英語教育の目的は、専門分野の論文を読み、外国人と議論するための英語力を育成することでしょう。その目的から離れています」

 大学が英語能力テストの「予備校」に成り果ててしまっているというのだ。

「英語能力テストで高得点をとった学生でも、自分の意見を述べ、他人の意見について批評する能力がない学生がいます。これでは、真の英語力を身につけたとはいえません」(大津氏)

 大学英語教育の第一人者、和歌山大学の江利川春雄教授も強い懸念を示す。

「政府は大学の授業を英語で行うように促していますが、これは危険な発想だと思います。そもそも、明治時代の中期に、明治政府は大学教育を英語から日本語で行うように変えました。海外の最先端技術や思想を日本語に置き換えて、深く考えることができたことが、近代化を支えてきたのです。外国語に頼った明治初期のような教育に戻せば、日本人の学問水準が後退します」

 江利川氏によると、英語を使った授業が増えれば、学生は英語を理解することに頭を使って、本来、学ぶべき一般科目や専門科目の内容を深く考えることができなくなるという。

週刊朝日 2014年3月7日号