大学を選ぶとき、知名度や偏差値、授業や研究態勢の充実などとともに、やはり注目するのはどれだけ就職につながるかという「就職力」。近年では「二極化」が進み、好景気であっても企業の少数精鋭主義志向が進んでいるようだ。
そうした状況が如実に示されているのが、教育情報を扱う大学通信が作成した「著名400社就職率ランキング」だ。ここでの「著名400社」とは日経平均株価の算出に使われる225社のほか、企業の知名度や規模、大学生の人気ランキングなどを参考にして大学通信が選定したものだ。いわゆる“有名企業”と考えればいいだろう。
これに大学の就職課や一部の企業が発表した採用データなどを集計し、基本的には卒業生から大学院の進学者を除いた学生数で割ることで導き出している。
ランキングのうち1位から35位まで、基本的には国公立大学と有名私立大学がずらりと並ぶ。これを見る限り、もはや過去のことと“烙印(らくいん)”を押されたはずの「いい大学に入り、いい企業に就職する」という“就職方程式”が復活しているかのように思える。
そうした見方は決して間違っていないようだ。『就活下剋上』(幻冬舎新書)などの著書がある大学研究家の山内太地氏は、「企業の採用方針が変わりつつあることが大きい」と分析する。
「最近の企業は学歴不問を掲げ、インターネットで多くの大学生にエントリーシートを提出させるのが主流でした。優れた人材を発掘しようとしていたのは間違いありませんが、そうしたバーチャルな選考方法は幻想にすぎないと気づき、かつての伝統的な採用方法に戻りつつあるのです」
皮肉なことに、企業側が学歴偏重に回帰したのはネット就活の普及が原因だという。場合によっては万単位に膨れ上がる応募に企業が対応できず、結局は大学の偏差値でふるいにかけたほうが合理的なためだ。
「企業は採用で『地頭のいい』学生を求めます。ところが、そうした学生は偏差値の高い大学に在籍していることが少なくありません。その結果、有名大学の学生が有名企業から内定を得るという傾向は決してなくならないのです」(山内氏)
こうした状況を、現在の受験生は鋭く見抜いているという。大きな傾向として、2008年のリーマンショック以降、受験生は「理高文低」と呼ばれる理系志向と「私立より国立」という地元志向を強めてきたとされる。そして、その二つは正しい大学の選び方だという意見は少なくない。
「極論すれば文系学生の終焉です。例えば英語の専門家は外注で間に合うから必要なく、優秀なエンジニアなら採用したいという企業が少なくないのです。大卒でも『手に職をつけたか』どうかが問われるわけですから、技術を学んだ理系学生が就活で強いのは当然です。受験生の志向は、少なくとも就職だけを目的にするのなら、間違ってはいないでしょう」(山内氏)
※週刊朝日 2014年2月21日号