「事件後の5月、犯人は逮捕されました。米国籍の男性で、近くに住んでいるとのことです。でも、いまだに弁償どころか謝罪すらありません」
寂しそうに肩を落としながらも、こう続けた。
「とはいっても看板の件がニュースになり、SNSで私がウクライナ人であることを公表したら、励ましのコメントがたくさん。応援してくださる方々も大勢買い物に来てくれたのです。日本人は本当に優しいです」
事件から10カ月。ロシアの食品や雑貨は、原価と運賃の高騰、銀行間の送金問題がネックとなり、在庫限りとなる商品が続出。代替品の確保を急いでいるという。
「2番目の姉の家族が7月に来日したので、新たに彼女が手作りする家庭料理を販売しています。肉料理『ポークストロガノフ』やお菓子『オリェーシキ』がとても好評です」
一方、ロシア人と結婚した長姉はシベリアで暮らしている。彼女とは連絡を取り合っているというが、心配は尽きない。
店の入り口脇には、ウクライナとロシアの国旗の色をイメージした手が白い鳩を支える「平和を祈ります」のポスターが貼られている。ヴィクトリアさんの心情を表しているかのようだった。
※週刊朝日 2023年1月6-13日合併号