さて、昼食を終えるといよいよマチュピチュ遺跡の観光です。
入り口まではバスでこれたのですが、もちろん遺跡の中は徒歩。
初日はガイドのアルベルトさんと一緒でした。
中に入ると見学ルートが決まっています。まずジグザグの階段を登る。どんどん登る。クスコで高山に慣れてから来たので息苦しさはあまり感じないのですが、普通に登り階段が続くのが辛い。
ようやくたどりつくとそこは見張り小屋と呼ばれる遺跡の中で一番の高台。
ワイナピチュと呼ばれる山の前に遺跡が広がるという、いわゆるマチュピチュの風景として雑誌やテレビなどでも紹介される風景。あの景色が見える場所です。
確かに素晴らしい。テレビでしか見たことがない「これがマチュピチュだ」という景色が目の前に広がっています。
時間はかかったし、いろいろと不安もあったが来てよかった。この景色は絶景です。天空の都と言われるだけのことはある。
でも、思った以上に怖くもある。
石造りの遺跡です。階段も石造り。手すりや鎖などない。足が滑って落ちたらと思うと身がすくみます。
写真をあげますが、顔がこわばっているのはちょっと恐怖と戦っている表情です。
インカの石細工の技術は驚くべきものです。なぜと思うくらい精巧に切られ組み合わさっている。本当に隙間がない。こんな山の上にどうやってこれだけの規模の都市が作れたのか、ありがちな感想ですが本当に驚きました。
断崖には段々畑も作られていて、アルパカもいました。管理事務所が飼っているらしいのですが、よくこんなところで落ちずにいるものです。インカ時代もこういう風にして飼っていたとのことです。
遺跡を一通り回るのには、二時間半くらいかかります。
一カ所、一本だけ高い木がはえている場所があります。
アルベルトさん曰く、アメリカの探検家ハイラム・ビンガムがこの遺跡を発見したあとに、アメリカの大学の研究隊がやってきた。その時の一人が山を登る時に落ちていた枝を拾って杖変わりにしていた。それをこの場所にさして、そのまま忘れて下山した。すると次に研究隊が入った時には、その杖代わりの枝は根付いて立派な木になっていた。だから杖の木と呼ばれてるんだと説明してくれました。
これがその杖の木ですが、「ほんとかなあ」と訝しげに見ると「ホントホント」とうなずく。
どうも怪しいのであとでリマのガイドのステファニーさんに聞いても「そんな話は知らない」というし、ネットで調べてもそれらしいエピソードは見当たりません。
多分アルベルトさんの冗談だったと思うのですが、なにせたどたどしい日本語だったのでどこまでが本気かなかなかわかりにくかった。
夕方、ホテルに帰りました。
ここで一旦アルベルトさんとはお別れ。
ホテルに宿泊して、翌朝、もう一度僕と家内だけでマチュピチュ遺跡に行きます。そのあと自力で駅まで行って鉄道でオリャンタイタンボ駅へ。そこで迎えに来ていたアルベルトさんと合流というわけで、丸一日は僕ら二人だけの行動になります。
ただ、この辺になると僕もそれほどビビってはいません。なにせ、ガイドがレストランで荷物を置きっぱなしにしても大丈夫というくらいですからね。
それでも翌朝出発の準備をしていて、宿泊していた部屋の窓に錠がついてなかったのには驚きました。一階の部屋でベランダの向こうには道がある。それだけホテルも安全に自信があるのでしょうが、さすがに寝る前に気がついていたら、心配でよく眠れなかったかもしれません。
それはさておき、早朝のマチュピチュです。
麓を出るバスは5:30が始発です。でも、朝一で行こうとする人達でもういっぱい。僕らは6:00のバスに乗りました。30分ほどかかるので、一番見晴らしのいい見張り小屋辺りに来たのが朝の7時くらいでしょうか。
幸い天気にも恵まれて、キンと引き締まった冷気の中、朝日が降り注ぐ天空の都は、昨日とは全く違う印象でした。
昨日もいい天気だったのですが、日射しが強く、暑いくらいだった。
今日は、実にさわやかで、尾根の向こうから差し込む日の光に照らされた石造りの遺跡はどこか神々しくもありました。
太陽を神と仰ぎ、その最も近い場所に都を作った古代インカ人の気持ちがなんとなくわかるような気がします。
昨日よりは石造りの階段を降りる時も恐怖感は少ない。少し慣れたのかもしれません。
いや、マチュピチュは朝に限ると痛感しました。