日本が輸出した「日の丸原発」第1号は、台湾にある。しかし、1999年に建設が始まったものの、稼働には至っていない。人為ミス、改ざん、施工不良、地震といった不安材料とともに、「3・11」をきっかけに反対運動にも火がついたという。“トラブル続き”の台湾の原発を「人力社」代表で旅行ライターの中山茂大氏(44)が取材した。
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毎年3月11日前後の週末に、知識人や著名人の呼びかけで、反原発デモ「廃核大遊行」が開催されるようになった。昨年の参加者は台湾全土で20万人、台北だけでも10万人に達した。台湾の全人口が2300万人であることを考えれば、規模は決して小さくない。
デモを企画した団体の一つ「緑色公民行動連盟」の崔●(りっしんべんに素)欣さん(37)は、貢寮住民の原発反対運動を追った記録映画「こんにちは貢寮」(2004年)を製作した。ドキュメンタリー映画としては異例の200回の上映回数を記録し、05年に日本でも公開された。崔さん自身も「核一」(台湾第一の原発)から20キロ圏に住んでいる。
「貢寮の反対運動は、台湾でもほとんど知られていませんでした。映画を通して多くの若者に関心を持ってもらったと思います。フクシマの事故があった日本で反核の動きがあれば、世界的に注目されます。宮崎駿や村上春樹など著名人の言動も、台湾に大きな影響があります」(雀さん)
馬英九総統は昨年3月の国民党会合で、「日本は全国の原発を止めて電気科金が上がり、企業が海外移転を検討する事態になった。その後、安倍晋三首相は原発廃止方針を引き継がないと表明した」と発言するなど、日本政府の原発再稼働への方針転換を引用して「核四」(台湾第四の原発)の稼働を正当化した。
「核四」建設当初から抗議活動を続けてきた「ノーニュークス・アジアフォーラム・ジャパン」事務局長、佐藤大介さんは、日本人の立場としてこう話す。
「日本の原発が台湾に輸出されてしまったことが申し訳ない。もし事故が起きてしまったら本当に申し訳ない。そしてそのときにメーカーが免責され、一円も賠償しないのは、さらに申し訳ない。恥ずかしいのです。だから、私は1月30日に、原告の一人として日本で原発メーカーを相手取った訴訟を起こす予定です」
人為ミス、改ざん、施行不良、そして地震と、いくつもの不安要素をはらんだ「核四」は、9月に試運転が予定されている。
※週刊朝日 2014年1月31日号