新年にシンガポールへ旅行し、現地で働く日本男子と食事をした文筆家の北原みのり氏。日本女子にこんな格言を送った。
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お正月はシンガポールに行った。旅行中、シンガポールで働く30代の日本男性と食事をする機会があったのだけど、私は確信した。日本の男はどんどん海外に行くべきだよ!
20代で「この国にいたら便利すぎて自分の力で生きている気がしない」と思い、単身シンガポールに渡った彼。お金も人脈もまるでないところから、今は会社を経営し、東南アジア全体を視野に入れたビジネスを展開しようとしている。自信に満ちているのに、全く嫌みじゃない爽やかな男性だった。何より感動したのは、彼のマナーだ。
エスコート、というのが自然に身についているのだ。食事中も、色んな話題に花を咲かせ、かといって自慢話はせず、相手に質問したり頷いたり、オーダーを自らスマートにして、もちろんお会計は「女性には払わせません」という態度。彼曰く、「こっちの女性に、凄く鍛えられました」と。
愛情表現をきちんとするのは当たり前、女性を喜ばせるための努力は当たり前、そんな当たり前をしなければ、誰にも相手にされない……ということに、シンガポールに来て彼は気がついたのだという。
彼も日本ではフツーの日本男子だったのだ。フツーに女に甘え、フツーに女にご飯をつくってもらい、フツーに外ではワリカンで、フツーにオレ様。でも、そんな日本のフツーは海外では全く通用しないのだった。
一緒に食事をした女友だち(30代)は、ショックを受けていた。「ワリカンは当たり前だし、男より多く笑うのも当たり前、そういう当たり前をしなければ、日本で男をつくれません」。
日本の女は、もっとワガママになっていいのかもしれない。だって日本の女が男を甘やかしすぎたおかげで、日本男子が海外で通用しなくなっちゃっているのだから。ライオンが子供を崖から突き落とすように、女も男に毅然とした態度で、男を崖からどんどん突き落として、這い上がってきてもらえばいいんだと思う。それはひいては自分のために、そして男のために必要な厳しさだ。そこで今年の格言、日本の女は心に一匹マーライオンを! 男に厳しいことが、愛情だ。
※週刊朝日 2014年1月24日号