簡単に決済のできるクレジットカードは現代社会でなくてはならないものの一つだが、ライブドアの元社長・堀江貴文氏は最近の体験から、カード会社の終焉が遠からずやってくると予測する。
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記事に巧妙に企業の宣伝を盛り込んで報酬を得る行為をステルス・マーケティング(以下ステマ)という。あるいは、ドラマとか映画に商品を報酬付きで登場させることを、プロダクト・プレースメントという。あらかじめ言っておくが、この原稿はステマ記事ではない。
先日、知人が東京の麻布十番にオープンした「ウルトラチョップ」というラムチョップの美味しい店を訪問した。オープンして1週間くらいの時だ。実は中目黒に1号店があり、好評につき2号店をオープンしたというわけだ。
確かに味は以前よりも焼き方が進化したのか、相当レベルが高い。1本480円とお手頃価格なのも嬉しい。さて本題はここからだ。飲食店では、もはやあたり前のことだが、カード決済をするためにカード決済端末を導入する。しかし、2号店にもかかわらずオープンに合わせて端末を導入できないと信販会社が通告してきたらしい。
当初の1カ月くらいはカーボンコピーの機械を使って「ガッチャン」してほしいと言ってきたのだ。通信回線を使ってリアルタイムで決済できないので、いろいろと手間がかかるし、入金も遅れるだろう。業を煮やしたオーナーは、すぐにタブレット端末iPadで「Squareレジ」をダウンロードし、住所や法人名・銀行の口座番号などを入力して、ローソンで980円で売っている「Squareレジ」のカードリーダーを購入した。「Squareレジ」に登録すると千円がキャッシュバックされるため、端末は事実上タダなのだ。
そしたら、すぐに決済ができて、三井住友銀行かみずほ銀行に口座があれば翌営業日に入金されるのだ。しかも決済手数料は3.25%である。日本の飲食店でカード端末を導入したら、4%以上の手数料設定が普通なのだが……。
初期導入が簡単にできる分、Squareはカードの使用履歴を詳細にモニタリングしており、自分のカードを使って不正に決済した場合、数時間後にすぐにSquareから不正使用していないか連絡がきたらしい。日本のカード会社の場合、そういう利用をしても連絡がこないことがよくあるらしい。ちゃんと見ていないのだ。その代わり最初の審査に時間を掛けているということなのだろうか。
この状況からしても、日本のカード会社は終わっていると思った。Squareは決済手数料も安いし、不正のモニタリングも強化されていて、スマホアプリでお手軽。しかもお客さんの目の前で決済できるので、スキミングの恐れも低い。
今後レジアプリと連携して販売管理もシステム化できるだろう。アメリカでは年間1兆5千億円以上がこのSquareで決済されているらしい。個人事業主も簡単に導入できる。他にも同様のサービスにPayPal Here、楽天スマートペイなどがあるが、ローソンで端末が買える気軽さと初回審査の迅速さでSquareが一歩先を行っているようだ。このサービスがキャズム(溝)を越えた時、それが日本のカード会社の終焉の時なのかもしれない。
※週刊朝日 2014年1月17日号