「早く俺のオモチャになって」

 携帯電話用の恋愛シミュレーションゲーム「誓いのキスは突然に」のワンシーンだ。画面の向こうからつぶやくのは、どこか陰のあるイケメンたちだ。

 サラッとした髪に細めの眉、鋭い眼差しのイケメンたちに囲まれ、その中のお気に入りの男性と恋愛する──。女性ユーザーの間でいま、恋愛シミュレーションゲームが大ヒット。「女子ゲー」として幅広い層から絶大な支持を得ている。

 冒頭の「誓いのキス~」を制作する「ボルテージ」の東奈々子副社長はこうみている。

「働く女性や家事で忙しい主婦の方たちが、ガラケーやスマートフォンを使って手軽にカジュアルにゲームができるようになったことが大きいでしょう」

 ゲームでの主役は「私」。次々と出会うイケメンのなかから男性を選び、恋愛を左右する場面で、自分でシチュエーションを選びながら恋愛を成就させる。少女マンガやライトノベルを読んでいるような感覚で、サクサクと先に進める。

 注目は、ゲーム内のシチュエーションだ。これが、ぶっ飛んでいる。街で出会ったイケメンと偽装結婚をしなければならなかったり、ごく普通の女子が王子様からプロポーズされたり、突然、総理大臣の娘だと告げられイケメンSPに守られたりといった突然の展開がほとんどだ。

「ゲームに突然や唐突が盛り込まれるのは、単純に女性がそれに弱いからというのもありますが、基本的にはドラマ作りと同じテクニック。最初に視聴者を引き込むためのテクニックの一つです。女性は能動的より受動的。愛しているというより愛されているのが好きなんです」

 と東さん。主流は「巻き込まれ型」の展開だ。タイトルも、かつて一世を風靡したトレンディードラマ風。これが20代後半から40代前半の女子に受け入れられた。

AERA 2012年11月12日号