橋下徹氏、石原慎太郎氏、安倍晋三氏。今政界で発信力を強めている3名は、いずれも右寄りの「保守勢力」ばかりだ。だがそこには、それぞれに大きく異なる主張もあるようだ。

 石原氏が念頭に置くのは保守勢力の結集による政界再編だ。橋下氏を「橋下さん」と敬称付きで呼んだ上で、「まず連携、連帯でしょう」と秋波を送る。自民党との連立は否定したものの、安倍氏との親和性も高い。安倍氏も「衆院選では競い合うが、選挙後ならば政策的に十分できる」と話す。

 だが、同じ「右」のように見えても内実はずいぶん違う。

 例えば憲法については、石原氏は「歴史的に無効。即時破棄」と主張するのに対し、改正に意欲的な安倍氏や橋下氏でさえ「憲法無効という議論には乗らない」と一線を引いている。

 こんなことがあった。石原氏に近い都議がつくる「東京維新の会」が「現行憲法は無効。大日本帝国憲法が現存する」との請願に賛成した。すると橋下氏は「権力者が憲法を破棄だと言うのは、国民としては許されない」と激怒。東京維新が日本維新と協議を進めていた連携についても「保留する」と通達した。

 関係者によると、石原氏は都知事を辞職する前に橋下氏と何度か会談しているが、憲法観については溝が埋まらないままだという。ハシゴを外された東京維新の都議らは「石原氏の意を忖度して行動したのに。日本維新と合流できなかったら、来年の都議選では落選確実だ」と周囲に嘆いているという。

AERA 2012年11月12日号