人生も後半戦。“終のすみか”を考える皆さん、死んだら、どんな墓に入りたいですか? 既婚男女1000人へのウェブアンケートを行ったところ、女性の27.6%(男性は20.6%)が墓には入りたくないと答えた。
死後、「墓に入りたくない」と考える人は、なぜ女性に多いのか。その背景について『お墓は、要らない』などの著者で、土葬や野辺(のべ)送りなどの昔の弔いに詳しい高橋繁行さんに聞いた。
「女性が、先祖代々の墓に入ることをうっとうしがったり、家族のしがらみから抜け出したいと思ったりするのは、今に始まったことではない。ただ、これまでの埋葬法とは違う『樹木葬』『散骨』『手元供養』といった新しい供養の仕方の登場が追い風となり、自分の意見を言いやすくなったのではないでしょうか」
男性の場合はどうか。長男は良くも悪くも「先祖代々の墓」に縛られやすいが、次男や三男のほか、実家から遠く離れて長年暮らしてきた人たちは都市圏を中心にあふれている。
「急速な少子化に加え、単身世帯の増加や無縁化などを背景に、入るべき墓を持たない人が増えています。『墓不要論』の根底にある、墓地や墓石にかかる不明瞭な価格への不信感も影響しているでしょう」(高橋さん)
その時代の経済事情や社会情勢を色濃く反映し、刻々と移り変わる「墓への考え方」。いつごろから変化してきたのか。前出の高橋さんが指摘する。
「1990年ごろ、それまでの墓石は『先祖代々何々家之墓』などと書かれていたが、自分たちの好きな字などを刻む『文字墓』が出てきた。これを機に、柔軟な考え方が受け入れられ、さまざまな埋葬法に目を向ける人が増えた気がします」
高橋さんは、「残された遺族の気持ちもくみ取る判断の必要性」を訴えている。
故人が散骨を望んだとしても、遺族には手を合わせる場所がなくなり、寂しい思いをするケースがあるという。あるいは、個人の意志を尊重して無宗教の葬儀を営んだ結果、親戚などから非難を受ける“世間体”も無視できない。
「どうしたら、自分自身、そして家族が納得できるか。生きているうちによく考え、話し合いましょう」
※週刊朝日 2013年12月6日号