
今なお圧倒的な人気を誇るダイアナ元妃の長男ウィリアム王子と、ファストファッションをセンスよく着こなす民間出身のキャサリン妃。二人の間に7月22日、英国民待望のロイヤルベビーが誕生した。
24日に発表された王子の名前は「ジョージ・アレクサンダー・ルイ」。ウィリアム王子夫婦が相談して決めたという。呼び名となる「ジョージ」は、エリザベス女王の父で、アカデミー賞を受賞した映画「英国王のスピーチ」でも知られるジョージ6世など過去に6人の王がおり、ブックメーカー(賭け屋)の名前予想でも一番人気だった。
英王室に詳しいジャーナリストの渡辺みどりさんは、最近20年間の英王室の浮沈についてこう語る。
「長いダブル不倫の末、チャールズ皇太子とダイアナ元妃が1996年に離婚。ほかにもスキャンダルが相次ぎ、英王室の人気は失墜しました。ダイアナ元妃がパリで事故死した際に、エリザベス女王がすぐにコメントを出さなかったことでも、世論の非難を浴びました。そうした中で英女王は、国民の支持を回復するために、さまざまな知恵を絞りました」
「金食い虫」などの批判を受け、93年から所得税を納税。宮殿の修理費は、その一部を一般公開することにより、自ら賄った。
「さらにライフイベントの際に、世の中の新しい流れをうまく取り入れて、庶民の心を上手につかんできました」(渡辺さん)
ウィリアム王子は、中産階級出身のキャサリン妃と恋愛結婚。キャサリン妃の懐妊を前に、男子優先だった王位継承を、男女を問わず長子が王位につくように変更した。こうした努力が実り、人気は徐々に回復。昨年の女王即位60年祝賀式典は盛大なものになった。
今回のロイヤルベビー誕生で人気はさらに高まり、直近の調査では、支持率は約8割。経済効果は短期的なものだけで790億円との試算もある。第2子が早くも話題になるほどで、英王室は当面は安泰そうだ。
今回、これほど盛り上がった理由のひとつは、キャサリン妃の今風の妊婦生活にある。ジャーナリストの多賀幹子さんが語る。
「つわりの吐き気対策にはアロマキャンドルを愛用。日本でも流行しているマタニティーヨガのプライベートレッスンも受けました。マタニティーファッションは、妊娠前から愛用していたファストファッションで調達。さらに、妊娠5カ月だった2月にカリブ海にバカンスへ行ったり、出産1カ月前まで続けた公務ではハイヒールを着用したり、とやや破天荒な一面も『今風』で、話題を提供し続けました」
軍務につくウィリアム王子は、規則で認められた2週間の「育児休暇」を取得。キャサリン妃の退院の際には「最初のオムツは自分が替えた」と笑顔で話し、ベビーシートに載せた赤ちゃんを自ら後部座席に乗せた後、乗用車のハンドルを握った。25日から夫婦は、英国南部にあるキャサリン妃の実家に滞在中だ。
今後、さらに伝統とは一線を画す「ウィリアム夫婦流」が強まりそうだという。
「伝統的に王族が育児を委ねてきた『乳母』は雇わず、キャサリン妃は自らの母乳で子育てを始めました。王子が休暇を終えて軍務に戻った後は、キャサリン妃は実家の父母の協力を得て、育児にあたるとみられます。王室としては極めて異例の子育てですが、夫婦は王子を『普通に』育てることを強く希望。国民の共感を得ています」(多賀さん)
※週刊朝日 2013年8月9日号