老後を年金だけでつつましく暮らす。一昔前まで当たり前だった光景は、もはや「理想郷」の世界かもしれない。しかも、これから吹く向かい風は、さらに強く厳しくなるという。嵐を起こすのは、アベノミクスだ。「家計の見直し相談センター」のファイナンシャルプランナー、藤川太氏に今後の負担増を詳しく試算してもらった。インフレ、健康保険、税金、年金……国民が背負う重荷によって、家計の年間支出額は5年後、いまよりもどれだけ大きくなるのか。

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 家計に影響を及ぼす負担増は、インフレ、健康保険、税金、年金だけではありません。一例を挙げれば、介護保険の保険料はこれからも上がると見られています。高齢化が進む以上、避けられないでしょう。制度が始まった2000年度、65歳以上が支払う保険料は平均で月2911円だったのに対して、いまや月4972円と、1.7倍です。今後どこまで上昇するか見通すのが難しいことから、今回の試算では対象としませんでした。

(1)現在の夫婦の年齢が30歳、40歳、50歳(2)子供なし、2人(3)年収が額面で400万円、600万円、800万円、1千万円――合わせて24のケースで試算しました。

なんと、「50歳・子供なし・年収1千万円」では、年80万円以上のお金が飛んでいくのです。ボーナスにも匹敵する大きさでしょうか。

 傾向として、まず目につくのは、年齢と年収が上がるほど負担増の金額が大きくなることです。どちらも、「インフレ」と「税金」、つまり消費税の増税による影響が大きいとわかります。生活がぜいたくになるからですね。

 子供がいる世帯といない世帯を比べると、いる世帯のほうが3万円ほど負担増が小さい傾向もあります。子供がいると、学校の授業料などの教育費や住宅ローンといった、消費税がかからない費用に充てる金額が大きくなるからです。これによって消費税がかかる支出が抑えられ、結果的に「税金」の負担が軽くなる。

 そして、もっとも問題なのは、年収が低いほど負担増の金額は小さくなるものの、その影響は深刻だということです。

「年収400万円」では、最低でも月2万8千円ほど支出額がかさみます。給料が増えなければ、夫の小遣いは「没収」ではないでしょうか。

 試算結果の詳細は、本誌で紹介しています。

週刊朝日 2013年8月2日号