2020年夏季五輪に立候補している東京など3都市の招致レース。7月3日にスイス・ローザンヌで開かれたIOC委員への開催計画説明会を最後に、招致活動は外交力を駆使した水面下のロビー活動に移る。そのことの質問を受けると、猪瀬直樹知事は言葉を濁す。「ロビー活動については、今は一切、お答えしません」。
ここからは「KEEP IN TOUCH(仲良し)」作戦である。五輪招致委員会の竹田恒和理事長にはできるだけ多くIOC委員に会って、東京を売り込んでもらう。倫理規定で招致委の直接交渉は許されてないけれど、今夏の世界水泳や世界陸上、世界柔道など国際イベントの場で東京をアピールする。
事情通は漏らす。「勝負が決まるのは、正攻法のロビー活動以外の舞台裏、水面下のロビー活動。勝つための戦略が二重三重にできていないといけない」
前回16年の招致活動で、東京が学んだのは「2回目投票では東京」という戦略だ。1回目では他都市に入れられたとしても、その都市が落ちた場合の2回目の投票で、「東京」を確約してもらう。つまり、1回戦、2回戦のシミュレーションを固めていく必要があるのである。
カギは、東京がIOC委員との信頼関係をベースとし、コンサルタントが他都市以上に魅力的な条件を示すことができるかどうか。もちろん東京がカネを直接渡すことはありえない。しかし、そのIOC委員の国や関係組織に対し、日本の政府や企業として支援プロジェクトを約束する。あるいは、IOCの会長選や五輪追加競技争いを絡め、票のやりとりをする。その類の「票集め」が効果的か。
そういった意味で、こわいのはマドリードだろう。王室外交を駆使できる。あの故サマランチIOC前会長の息子のサマランチ・ジュニアIOC理事がいる。IOC委員が3人もいる。
米五輪専門誌「アラウンド・ザ・リングス」のエド・フーラ編集長も言う。「確かに、マドリードがジャンプし、東京とトップを並走している。イスタンブールは負傷したようなもの。でも、まだわからない」。
運命の日は9月7日、ブエノスアイレスでのIOC総会で開催都市が決まる。あと2カ月。一寸先は闇のバトルがつづく。
※週刊朝日 2013年7月19日号