「歴史的な低金利水準」にあるといっても、こんな“破格”の住宅ローンの登場には誰もがビックリしたに違いない。

 6月に三井住友銀行、三菱東京UFJ銀行、みずほ銀行のメガバンク3行が相次いで「期間3年で固定金利0.6%(最優遇)」という住宅ローンの取り扱いを開始した。変動金利が0.875%であることを考えると、まさに「異次元」の住宅ローンだ。

 先陣を切ったのは三井住友だ。7月末までの期間限定で、融資枠も1千億円に設定していたが、すでに7月上旬には受付を終了するほどの人気ぶりだ。

 背景には、貸し出しを増やした金融機関に0.1%という低金利で資金を供給する日銀の制度がある。三井住友はこの制度を利用した。0.6%という金利は採算ぎりぎりのラインだという。他の2行は日銀の制度を利用していないものの、「住宅ローンの需要喚起のため」(三菱東京UFJ銀行)に商品設定した。

 ただ、リスクもあると指摘するのは住宅問題ジャーナリストの山下和之氏。

「0.6%の金利が適用されるのは当初の3年間だけです。金利水準がいまと変わらなくても4年目からは金利が1.5%(三菱東京UFJの場合)にアップします。金利がいまより上がっていれば負担は大幅に増します」

 たとえば、30年のローンを組んで残りの返済期間が20年という人が、このローンに借り換えることで返済期間を15年に短縮できる。こういう人向けの「限定商品」としてとらえたほうがいいという。

 三井住友、みずほは新たに住宅ローンを組む人限定だが、三菱東京UFJは借り換える人にも応じている。「異次元ローン」で“身軽”になればそれに越したことはない。

週刊朝日 2013年7月19日号