2012年9月2日未明、東京・六本木のクラブ「フラワー」。大音量の音楽が鳴り響き、数百人の客でごった返す中、従業員の携帯電話が鳴った。
「Kはいるか?」これが、すべての始まりだった――。
深夜の凶行から3カ月、ようやく事件の全貌が見えてきた。クラブ「フラワー」で、12年9月に飲食店経営の藤本亮介さん(当時31)が目出し帽の男らに襲われ、死亡した事件で、警視庁は12月3日、襲撃にかかわった暴走族グループ「関東連合」の元メンバーら15人を特定し、凶器準備集合の疑いで逮捕状を取った。警視庁の要請で、外務省も海外に逃亡している23〜33歳の容疑者7人に対し、旅券返納命令を出した。
「当初、藤本さんが経営する飲食店を巡るトラブルなどが取りざたされていました。しかし現在、警視庁は藤本さんは人違いで殺されたという線で捜査を進めている。逮捕状が出ている男も、周囲にそう話しているようです」(全国紙記者)
事件発生時から、週刊朝日はこの「人違い」説を報じてきたが、それには確たる根拠があった。そして今回、事件をよく知る関係者から、新たにこれを裏付ける重要証言を得たのだ。
冒頭のシーンに戻ろう。電話の主は、クラブの常連客で元関東連合リーダーのIだった。「K」の風貌を知らない従業員がその旨を伝えると、Iは「がっちりした体格で足を引きずっている」などと身体的特徴を説明したという。
そこで従業員がVIP席を見ると、男女5人で酒を飲んでいる男性がその特徴によく似ていた。「そういう人なら来ているけど、藤本という名前だ」。
そう答えた従業員に対し、偽名を使っている可能性もあると疑ったIは、「(これから仲間が行くから)確認させてほしい」と言って電話を切ったという。
それからしばらくたった午前3時40分ごろ、目出し帽をかぶった男9人が非常口から店内に突入。VIP席に座っていた藤本さんに迷うことなく向かい、鉄パイプや金属バットで顔や頭などを1~2分間殴り続けたのだ。
※週刊朝日 2013年1月4・11日号